猜疑と疑念と 4

気づいたときには、軍立病院の病室に居た。見慣れた景色と、見慣れた機器。予想外だったのは、ヴィルフリートが来ていたことだ。
「幻覚、かな?」
「本物だ。」
「そう…それは…“想定外”だな…フフ。」
呼吸器や点滴など、使う物ではあっても使われる対象になるなど、悪い冗談だ。
「ローデンバック大佐と…バーンとか言う研究者が、一緒だった。」
「お前以外は無事だ。」
「フフ…僕みたいな、“ただの医者”には…アレは、避けられないよ…。」
「死ねばよかったのだ。」
そう冷たく言い放つヴィルフリートを見て、オーレリアンは愉しげに微笑む。
「酷いなぁ。ここは、…抱きついて、無事を祝うトコじゃない?まぁチョット…反射的に避けちゃったけど、ね。」
ベット脇に、車椅子に乗り座るヴィルフリート。重い腕を動かし、彼の頬に触れる。
「…実際、死んでたほうが…怪しまれなかった、かな?ごめんよ、ヴィル。」
あの時、爆発物に気づいたバーンが逃げろと叫んだ。反射的に避けることは出来たのだが、そうしなかったのは、オーレリアン・ブリュンティエールは、“ただの医者”だからだ。
戦えること、切り抜ける術を持っていることなど、気取られてはいけない。それはレリウーリアを、ヴィルフリートを滅ぼすことに繋がるかもしれないから…――。
「ちょっと、上手くいかなかったかも…。僕にしては、失態かな?生きてる、なんて……!」
「……。」
「……。」
「…忙しいんだ。勝手に寝るな、馬鹿が。」
フンと、見下したようにオーレリアンを見たヴィルフリートは、部屋を出て行く。一人残された彼は、口元に手をやり、愛おしそうに、その後姿を見送った。

パチパチと、キーボードを叩く音。部屋一面のモニターと、伸びるコード。
「…そう、病院に運ばれた、か…。死ななかったんだね?ご苦労様。」
機械的な音声で、そう答える。部屋から人の気配が消えると、彼は、キーボードを叩く指を止めた。
「本当に“ただの医者”、なのかい?君は……ねぇ、オーレリアン・ブリュンティエール?」
冷たい、機械の横顔。人形のように表情のない彼は、そうつぶやいた。


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