猜疑と疑念と 2

敬礼に始まり、ホフク前進やら体力勝負の行軍をさせられ、昼食を挟み、射撃訓練が始まる。
「あ〜、ヤダヤダ。銃なんて無骨で無粋な物、僕は嫌いなんだよね。そう思わない?」
隣に居た、長身の男性に話しかける。自分が見上げなければいけない相手、というのは珍しい。短く切り揃えられた銀の短髪。すっと延びた姿勢が、高い身長をさらに強調し、涼しげで知的な横顔も、なかなかに美しい。こう造りの良い外見を見せられると…“中”も見てみたくなるというものだ。そう考えると、自然と親しみが湧いてくる。
しかし、話しかけられた相手は、だんまりと沈黙したままだ。
「これは、嫌われたかな?邪魔したようなら、申し訳なかったね。」
「…興味がないだけだ。」
男は、そう言って銃の引き金を引く。ど真ん中を撃ちぬく弾丸、しかし顔色ひとつ変えない。
「お見事!うんうん、実践形式の訓練では、キミと組めれば楽できそうだね。」
「…そうは思わないが?」
「そう?僕はただの医者だから、こういうのは苦手でね。君は医療関係じゃないし…従軍ジャーナリストにも見えないから、エンジニアかなにかってとこかな?」
「……。」
「フフ、詮索して悪かったね。」
「…自分が名乗らないのに、人の名前を聞くとは、無礼な人ですね?」
「これは、失礼。僕はオーレリアン・ブリュンティエール、軍立病院の外科医師だ。」
「私は、軍立研究所の研究員バーナード・イーデン。」


「では、7班の編成は、エンリケ・ローデンバック 大佐、オーレリアン・ブリュンティエール医師、バーナード・イーデン研究員。」
先に面識のあった2人は顔を見合わせ、同じ班に割り当てられた、場違い?な相手を見る。
「殺椀とまで呼ばれた男が、何故?」
「大佐は身体上の都合で軍を休職なされていますが、軍籍がありますから、今回の簡単な演習へ参加していただくことになりました。」
バーンの問に、教官の女性軍人が、そう答えた。
「簡単な演習、ねぇ。僕には、キツイんだけど…。」
「ブリュンティエール医師も、軍医を続けるなら、積極的に参加してください。ただでさえ、規定より出席率が悪いんですから。」
そう言われて、バツが悪そうなオーレリアン。
 実戦形式の演習はいたってシンプルで、『演習施設内で、模擬弾によるマシーナリーとの戦闘を行う。』というものだ。すべてを破壊すれば、演習は終了だ。
「じゃ、僕はお二人にお任せしますね。」
笑顔のオーレリアン。
施設に入るなり、ガチャガチャとさっそくマシーナリーが寄ってくる。フィーン、という稼動音と共に、弾が発砲される。



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