Merry Christmas to Devils 6

 ひとしきりの銃声が止み、自分を追う足音が減った。ついてきているのは…1人。
「ご苦労さんなことやねぇ。」
ニヤリと笑う。一つに編んだ紅い髪をなびかせ、自分を追う狩人が、離れない距離を保ちつつ廃棄されたプラントを駆ける。それは、愉快な鬼ごっこだ。
「くそ!どこに行った?!」
「はーい、鬼さん。俺ならこっちやで?」
「?!」
ドン、と左の脇腹に衝撃が走る。熱さは灼けるような痛みに変わり、膝をつくと、血濡れたナイフを嬉しそうにくるくると回す青年の姿があった。マズイ、そう判断した女…ピンク色のスーツに身を包んだグリムエンジェルスの一員は、急いで仲間に連絡をとろうとインカムのボタンを押す。
「妨害させてもらってますから、無駄ですよ。通信機器の類は機能しません。もちろん、貴方の所在を示す発振器もね。」
無感情な声をした、青い髪の青年がそう告げる。彼女は、流石に自分の置かれた状況を理解した。後悔と共に押し寄せる恐怖、この窮地を切り抜ける術を求めて思考を巡らせるも、最悪の結末以外、何一つ思い浮かばない。狩るつもりで、引きこまれたのだ。…這い出すことの出来ない、地獄への入り口に。
「ま、時間はあるから、ゆっくりいこか?リクエストがあれば受け付けるで、腕か足か…どこがええ?」
「また貴方は…さっさと仕事を終わらせる気は無いんですか?」
「エエやん、隠密行動や無いんやし。あ、リクエスト無いみたいやから、とりあえず腕でええ?」
「ひっ、ひぃ!」
搾り出すような声にもならない悲鳴、見開かれる瞳と震える身体。ここに鮮血が加わるとなれば…最高だ。回していたナイフが、止まる。

「やめて!殺さないで、ヘイムダル〜!」

ダクトの上から、ヒラリと飛び降りてきたのはメアだった。
「ちょっとちょっと、なんやの?今いいとこやって。」
「その人、殺しちゃ駄目。だって…。」
メアは、膝を付く女の横にしゃがみ込む。一縷の望みが見えたのか、女の顔に血の気がもどる。
「だって、飾りになってもらわなきゃいけないんだもん。」
にっこり微笑むメア、首筋にスタンガンを押し当てると、ブレーカーが切れたようにその体は倒れ伏した。
「あかんよ、人の獲物に手ぇ出しちゃ。」
「ゴメン、クリスマスの飾りにしたいの。だから頂戴?」
「クリスマスの…飾りぃ?」
「うん、ほら、十字架にくっつけるの♪クリスマスには、十字架のオブジェが必要でしょ。」
「それは…十字架ではなく、磔なのでは?ところで、彼女は?」
「ん?あぁ、前に言ってたメアちゃん。コイツ、俺の相棒でロッキー言うんや。」
「変な呼び方しないでくださいと、言ってるでしょう?私はロキです。」
「初めまして、ロキ。ね、パーティ終わったら返すから、しばらく貸して?」
二人は、顔を見合わせる。
「ま、クリスマスイブなら明日やし、待っとたるよ。な?」
「…いいでしょう。ただ、一つ聞きたいのですが、彼女たちに私達の位置を教えたのは、貴方ですか?」
「うん。だって、私だけじゃ、あの集団はチョット…。」
「コラッ!自分でちゃんと頑張りぃや。前のと合わせて、貸し3やで?」
「今度必ず埋め合わせするよ。あの…貸し4にして、運ぶの手伝ってくれないかな?」


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