Merry Christmas to Devils 1

それは彼の気まぐれで、数年に1度言い出すのだが…皆、「今年は言い出しませんように。」と、内心唱えているのだった…。


「今年は、パーティを開こうと思う。」
「パーティ、ですか?」
「ああ”クリスマス”だからな。」
「……。」
二人きりの車内、政府庁舎へ向かう途中で、街並みを眺めていたヴィルフリートが、突然そう言い出した。バックミラー越しに主の顔をとらえて、アロイスは内心「しまった。」と後悔する。こんな、クリスマスムード一色の街を走るのではなかった。
「なんだ、アロイス?何か言いたいことでもあるか?それとも、今年はお前に、俺を愉しませるいい案でもあるのか?」
「申し訳ありません、ヴィルフリート様のことなら理解しているつもりですが、私は娯楽というものに対して疎いので。」
「フン、まぁいい。貴様には、俺の護衛をやってもらわなければいけないからな。クリスマス前後は、慰問で忙しいからな、余興に使う時間など無いだろう。幹部たちに連絡しておいてくれ、幹事を決めてパーティを開催するとな。詳細は任せる。」


「…――というわけで、今年は開催するそうだ。」
「new moon、お前の不手際じゃないの?何もわざわざクリスマスを連想させる場所を抜けなくてもよかったんじゃないか?責任取れよ。」
「仕方ないだろ、レズタクルならともかく、ニューロッカの街並みまで把握してなかったんだ。残念ながら、俺は護衛をやれと言われたんでな。誰か、頼むぞ。」
「なんだよ、ソレ。ズルイんじゃない?」
「総統閣下の命令だ。」
『ちょっとちょっと、そんなトコで子供みたいに言い合ってんじゃないの。私たちだって暇じゃないんだから、さっさと終わらせましょ。』
言い争うnew moonとFull Moonに対し、モニターから苦言を呈したのは、 crescent lunulateを名乗るアンネリーゼだった。緊急招集をかけ開かれた幹部会。クライドラフトにいない幹部はモニターでの参加だが、組織をまとめる将軍クラス全員集合というのは、レリウーリアにしては珍しい。
『俺達はパスだぜ!前回、幹事を出したからな。なぁ?』
『申し訳ないけど、DIVAの一件があったから、人手不足なんだ。ツクヨミ…じゃなかった、last quarterのいうとうり、前回は僕らの部下から幹事を出したし、今回は手を引きたい。』
last quarterと呼ばれた赤髪の少年は、白猫の肉球をぷにぷに押しながら、横のmoonlightともども拒否の姿勢を見せる。
『言っとくけど、年末調整やら年度末決算で忙しいんだから、私も無理よ?表の会社分と、組織の年間収支、まとめなくちゃいけないんだから。他の暇そうなのがやんなさいよ。lunar halo、アンタはダメなの?総統と趣味が合いそうじゃない、そんな小洒落た格好してるんだから。総統も、服装や見た目に凝るじゃない。』
「ん〜、政治屋は、年末はパーティで忙しいからね。情報集めて商売してるんだ、今は抜けられない。それに、俺はまだこの中じゃ“常識人”だと思うけど?そうだ、姐さん、あんたはどう?」
『馬鹿お言いでないよ。アチキの店だって、一応人並なサービスしてるんだ。クリスマスに人手が要るのはあたりまえじゃないか。他を当たんなさいな。 first quarter、軍部は暇そうじゃないかい?』
「や・やめてくださいよ。僕は、無理です。総統の趣味なんて分かる訳ないじゃないですか!だいいち、僕の部下は皆軍属です、“失踪”とか“事故死”とか…後始末が大変なんですから。民間人の副官持ってる人と、同じにしないでください。あ、ダニエラ所長は?!研究所は一般から独立してるし、身軽そうじゃないですか?」
『吾輩は、今、研究の最終段階にある。半年分の研究費を無駄にしてもいいなら引き受けるが?吾輩が動くにふさわしい理由が、全く見えん。』
モニター越しに、いつもと変わらない笑顔を浮かべたダニエラが、勝ち誇ったような態度で腕を組む。

要は、皆“やりたくない”のだ。



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