The lunatic iover 1

『明日が楽しみだよ、なかなか逢いに来てくれないんだから。』
「別に、貴様に逢いにいくわけじゃない。仕事だ。」
『でも、病院にも来てくれるんでしょ?』
「汚染ウィルスの感染に苦しむ子どもを慰問するだけだ。」
『優しいんだね、“若社長”は。』
「その後は、政府高官と武器納入についての交渉がある。マスコミ向けに今回の慰問をアピールしてやれば、また交渉の有利な材料に使えるだろう。」
『仕事熱心だね。その熱意の僅かでも、僕に向けてくれないかなぁ。』
「フン。」
『まぁ、いいや。愛しい君の到着を心待ちにして…――。』
通話時間、3分40秒の文字がディスプレイに浮かぶ。
「鬱陶しい!」
ヴィルフリートは、携帯をアロイスに投げ付ける。事もなげに受け取ると、彼は主人の携帯をテーブルの上に置いた。
「……いつからあんなに鬱陶しい奴になったんだ。イライラする!」
内心、自分が知る限り元々オーレリアンはあの調子では?と尋ねるも、口にはしない。
「あののぼせた頭を冷ますには、身体から切り離してやるのが1番か?」
「御命令されますか?」
苦笑するアロイスに冷たい一瞥をくれ、ヴィルフリートは着ていたシャツを脱ぎ捨てると言う。
「アイツのために動く事も気に入らん。それに……生首にまとわりつかれるのも面倒だ。殺しても、死にそうにない奴だからな。無駄に疲れた、もう休む!」
「良い夢を。」


  北サウザのいつも重苦しい空とは異なり、クライドラフト連邦大陸首都、ノースタウンの空は、晴れ渡っていた。軍立中央病院、負傷兵に限らず、今日も専門的な治療を必要とする重傷者が次々と運ばれる。1台の高級車が横付けされ、病院長が敬礼する先に、従者に支えられながら、車椅子に乗り換え笑顔を見せるヴィルフリートの姿があった。
「ようこそおいでくださいました、ダールベルク社長。」
「出迎えなど、必要なかったのに。」
「いえ、今回も病院の方に多額の寄付をしていただき、いつも感謝しています。」
「当然のことをしているだけです。子供が苦しむ世界ほど、悲しい世界はありませんから。僕に出来ることは僅かですが、お手伝いが出来れば嬉しいです。」
首を傾け、微笑むヴィルフリート。その視線の先に、良く知っている顔が映る。
「ヴィル!待っていたよ。今日は、僕が院内を案内させてもらうよ。」
「オーレリアン、久しぶりだね。君に会えて、嬉しいよ。」
「学園を卒業してから、なかなか会えなかったからね。どうしてるか心配だったんだ、君は身体が弱いから。今日は、大丈夫かい?無理してない?」
「平気だよ、心配してくれてありがとう。」


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