Intersection 12

「大丈夫。ここからは、僕が責任持って面倒を見るよ。」

いつの間に?レイヴンは、手にしていた大鎌を構え直した。
不気味な、黒い仮面の男が立っている。表情は一切読み取れない、しかし声だけは穏やかだ。黒ずくめのスーツの男は、すっと右手を差し出すと、メアの名前を呼ぶ。
「ごめんなさい。」
「まぁ、60点ってとこだね。次は、もう少し手際よくやるんだ。」
彼女が差し出された手をとると、男は彼女を打き抱える。入口の方から、数台の車が彼らを迎えに来たようだ。運転手は恭しくドアをあけ、二人が乗り込むのを待つ。
「あと5分で軍のウルサイのが来る。君たちにも車をまわすよ、シャトル発着場まで送ってあげよう。可愛い大事な部下を治そうとしてくれたお礼にね。」
「大切なのに、こんな死ぬかもしれない危険なことをさせるのか?」
リリィの言葉に、男はクスクス笑って答えを返す。
「彼女は特別だからね、死んだら丁重にサンプルにするさ。まぁ、死なせるつもりはないけどね。」
男は、車に乗り込んだ。
「どうぞ、お急ぎください。」
顔の片側を仮面で隠した金髪の女性が、もう一台の車の後部座席を開けるとそう促す。
「さっさと戻るぜ?」
レイヴンはスタスタ車に乗り込んだ。こんなところに残っていても、何の得にもならないことは明白だ。あとに続くように、しぶしぶ車に乗り込む3人。4人を乗せて滑りだした車は、駅に向けて走りだす。屋敷を出てしばらくすると、明るく輝く高層ビル群の夜景が目に映る。駅のある市街に入れば、多くの人で賑わっていた。ビルの大型ビジョンに映ったニュースが、ただ短く高級住宅街で“火災”が起こり、主人が亡くなったという“事実”を告げる。どちら側の思惑でそうなったのかはわからないが、いつだって、事実は都合よく真実と入れ替わる。


「――…で、メアちゃんは?」
「あ?次の日ケロッとして店に来たから、模擬戦ふっかけた。」
「おいおい。」
仕事から帰ったオヴニルがBlueKidsに顔を出すと、暇そうな顔のレイヴンと、食事中のジャスティーの姿があった。
「それが、不思議なほど傷ひとつないんですよ。」
「へー、余程しっかりした組織の人間ってことか。変な依頼を受けるより、安全に稼げそうだな。ん〜、今度仕事紹介してもらうかな?」
「せっかく浄化してきたのに、今度は汚染ですか。」
ジャスティが呆れ顔で見上げる。
「傭兵にとっては、使い捨てにされないところにつくのが、長く生きるコツだろ。俺にとっては、店に出入りする可愛い子ちゃんが増えるってのは大歓迎さ。」
「ハァ、そうですか。」
「アイツじゃ、ウォームアップくらいにしかならねーけど。」
「なら、今度の仕事は楽だったし、今度は俺が、バーチャスミッションにでも付き合うか。」



世界を救おうとする者、世界を壊そうとする者、喜びと希望を片手に笑うものと、悲しみと痛みを抱え絶望を嘆く者、危ういバランスで成り立つこの世界で、本来ならけして交わることのない両者。しかし、この場所だけは特別で、思想も立場も関係なく、すべての人に休息を与えてくれる。BlueKidsに、またひとり新しい客が訪れる


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