シュワルツ失踪事件 7

ハクア大陸、ピエデルト州。ここは、崩壊の爪跡が残る場所。汚染の度合いも高く、人が住める場所も、クライドラフト大陸に比べるとぐんと少ない。今回の任務は、Full Moon将軍の研究成果を証明すること。要は、新型の汚染ウイルスを原生生物に感染させるこだ。メア以外にも、今回の任務に当たるメンバーが、指定の場所に集まっていた。彼らは傭兵らしく、チ・カセカイの殺愛から依頼を受けたようだ。
「おいおい、まさかお嬢ちゃんも行くのか?」
「駄目?」
「冗談だろ、俺達は子守りまでするつもりはないぜ?」
「別に、邪魔なら捨ててって。取り敢えず、強いの探さなきゃ。」
「ガキに言われなくても分かってる!よお、皆行こうぜ。」
「……。」
メアのことを見下し、男たちは全く意に介さない。仕方なく、メアは勝手に彼らの後に付いていくことにした。朽ちた工場跡地周辺。高汚染状態にあり、既に質の悪い感染生物が闊歩していた。おまけに、この日は工場跡地一帯を対象に浄化用ドロイドが配置され、それと同時に警備用ドロイドまで投入したばかりということで、やたら警戒が厳しく予想外に手こずっていた。
「ちっ!こんなに警戒されてちゃ、やりにくくてしょうがないぜ。」
「まったくだな。」
指令では、もう少し踏み込んだ場所にいる強力な原生生物を狙わなければいけない筈だ。
「ねえ、こんな所じゃ駄目。もっと進まないと。」
「分かってる、ガキはすっこんでろ!」
「なぁ、これ以上進むのは無理だぜ。」
「ああ。…なぁ、いっそ口裏合わせてパパッと終わらせないか?」
「そうだな…このままじゃ命がいくらあっても足りねえしな。」
彼らは、既にヤル気を無くしたようだ。
「駄目!!」
叫んだのはメアだ。
「このくらいじゃ将軍が納得しないし、総統も喜ばない。」
そう、もっと深部へ行かなければ。
「…行きたきゃ勝手に行けよ。ウットーしいんだよ、てめえは!!」
怒声と共に、メアの身体が弾かれた。廃棄されたダクトに、背中が打ち付けられる。
「つっ…!」
「俺達は、子供の遊びでやってるんじゃねぇんだよ!こんな状況じゃ仕方ねぇだろ。」
「だから、何もわかってないガキの子守りは嫌だったんだ。さっさと用意されたアンプルつかっ?!」
突如、男の額ははじけ飛び、鮮血が勢い良く吹き出し地を濡らす。何が起こったかを理解するより早く、彼らの仲間も次々と血の華を咲かせ倒れ伏した。
「…――あの方の為にならないなら、皆要らない。」
メアの右手には、護身用の小銃が握られている。
「あの方だけが唯一絶対。一度引き受けた仕事を放棄するなんて、絶対に赦されない。遊びじゃないんだよ?」
 彼らが分担して持っていたウイルスの入ったアンプルを回収する。自分のものと合わせれば4つ…ともかく、必要なのはそれを打ち込む相手だ。ただ、この場所を1人で進むのは、メアにとって荷が重い仕事だった。身を隠す場所は多いものの、敵との距離を長く取ることが難しい。接近戦の心得はあるが、得意ではなかった。しかし、もう壁になる人物はいない。メアは、銃をしまうと天鞭テレスを取り出した。何かを決意するように頷くと、メアはひらりと物陰から躍り出る。そして工場地帯の奥地へ潜入していった。

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