シュワルツ失踪事件 6

トランスポーターに向かうシャトルに乗り、流れる車窓の景色に目を向けるメア。いつも抱えている“連れ”がいない手持無沙汰を紛らわすように、開いたコンパクトの鏡を覗きながら、ヘッドドレスの位置を直す。
「私をこき使いすぎだと思う。シュワルツ、取りに行けなくなっちゃったじゃない。」


Blue kidsのドアから出てくる一人の女性。美しいブロンドをかきあげ、ふっとため息をつく。
『ディーバ?』
『!!』
メアの問いかけに、彼女はハッとしたように眼を見開き顔を強張らせたが、目の前の相手が年端もいかない少女であるとわかると、安心したようにその緊張を解いた。
『…組織の子よね?私に用かしら?』
『うん。』
『…だったら、ここじゃまずいわよね?裏で話を聞くわ、ついてきて。』
二人は人目を避けるように裏通りへ、ディーバと呼ばれた女性が口を開く。
『で?連れ戻すよう説得に来た訳??生憎、もう戻る気はないわよ。組織の仕事なんてしてたら、いくつ命があっても足りないもの。いい加減嫌になったのよね、あなたも若いんだから、早く組織から手をひくべきよ。後戻りできなくなってからじゃ、遅いんだから。私は幹部候補になって、総統の命令を受けたこともあるから言うの。総統は、私たちのことなんて、使い捨ての道具とし思ってない。例えば、貴方が任務で死んだって、ほんの少しも悲しまな――。』

パンッ!

『ぎやぁああ、?!』
『次は左腕。』
再び、パンと乾いた音がする。少女は、サイレンサーを取り付けた小銃を片手に首を傾げた。ディーバと呼ばれた女は絶叫し、動かなくなった両腕から鮮血を流しながらのたうっていた。
『別に連れ戻しになんて来てないよ、処分しろって言われただけ。…やっぱり、この銃、射線がずれてる。』
『ひっひいっ!』
メアが俯き銃を触っていると、彼女は悲鳴をあげながらその場を逃げようと走り出した。
『あ。…こう、3センチくらい修正が必要かな。』
ぶつぶつ言いながら引き金を引くメア。たて続けに撃たれた2発の弾丸は、逃げる女の両足を打ち抜き、彼女は前のめりに倒れ込む。絶叫が、狂った旋律となって周囲に響いた。『ねぇ!命がそんなに大事?』
つかつかと、メアが歩みを進める。問いの答えは返ってはこない。代わりに響くのは、恐怖にひきつった、ただの悲鳴。
『使い捨ての道具じゃ、どうしていけないの?』
のたうつ身体を踏みつけて、メアはその頭に銃口を向けた。
『総統は、使えない道具なんて必要としない。私はあの方の物だから、いらないならそれまで、悲しんでもらおうなんて思わない。』
何のためらいも躊躇もなく、メアは銃の引き金を引く。
『私の戻る場所なんて、あの方の傍以外に無い。他は、要らない。』
あたりに、再び静寂が戻った。


『――…間もなく停車いたします。』
「あ、降りなきゃ。よいしょっと。」
大きなカバンを引きずると、メアは席を立つ。
「これ終わらせて、早くシュワルツ迎えに行ってあげよう。」

[ 17/62 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]








Material by
ミントBlue




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -