シュワルツ失踪事件 5

メアのもとに戻った二人だったが、部屋に彼女の姿が無い。代わりにメモが1枚置いてあった。

『急に“お仕事”しなきゃいけなくなったから…Blue kid’sって酒場に行ってきます。 メア』

「Blue kid’sに用があるなんて…なんか依頼でも出す気か?」
「傭兵…って雰囲気じゃないからな。まあ、いい行こう。」
二人は、自分たちの行きつけの酒場でもあるBlue kid’sの方へ足を向けた。彼らが酒場の入口付近に着いたとき、向かいからメアがとぼとぼ歩いてきた。
「あ、オヴニルにレイブン……。」
「おい、例のウサギ見つかったぜ!」
「ああ、知り合いの家で保護されてるって。…メアちゃん?どうした??」
「うん…意地悪がいるから、お仕事忙しくて。すぐにハクア大陸に渡らなきゃいけないから、シャトルの時間に間に合わないんだ。あの…シュワルツ、そこで預かってもらえるかな?」
「まぁ…大丈夫だとは思うけど。そんなに急ぐのか?」
「シュワルツも大事だけど…もっと大事な“あの方”の為だから。…2日ほどで戻るから、そう伝えてもらえないかな?」
「…わかった、知らせておく。ああ、メアちゃんのウサギは、“ソレイユ・ルヴァン”って郊外の花屋に居るんだ。調べればすぐ場所は分かると思う。」
「ホントにありがとう、帰ったらすぐ迎えに行くから。じゃ。」
少し微笑んで、彼女はマントを翻し駅の方へ向って行った。微かな、硝煙の香りを残して…――。


Blue kid’sは相変わらずだ。今日も傭兵達で賑わっている。オヴニルとレイブンの二人が店に入ってしばらくした後、何やら顔をしかめながら、一人の男が入口をくぐる。彼は親しい仲間らしき相手に近づくと、彼からグラスの酒を奪い一気に飲み干す。
「サンキュ、うえ、まだ気持ちわりい。」
「大丈夫か?どうしたんだよ??」
「あっちで、一人殺されてたんだよ。ほら、何日か前からここに来てた綺麗な女。頭をウチ抜かれてやがった。スゲー形相でさ…手足も撃たれてたし。あんなもん見ちまうなんて、運がないぜ。」
「この店に来てるくらいだ、トラブったんだろうが…お前、ついてなかったな。そうだ、お前運悪そうだし、トランプでもしようぜ?」
誰かの死など今更な話だ。いつものように傭兵たちは酒場でのひと時を楽しむ。それは他愛もない会話でしかなく、喧騒にかき消えていった。


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