シュワルツ失踪事件 4

“ソレイユ・ルヴァン”そう書かれた看板の店には、世界が汚染され滅びかかっていることなど忘れさせるような、色鮮やかで香り良い花々が咲き誇っている。森から黒ウサギを持ち帰った彼女だが、口元に水を運んでも、ウサギはいっこうに飲もうとしない。ぬくもりは伝わるものの、呼吸は浅く、今にも止まりそうだ。身体を調べても、特に目立つ外傷も無い。
「どうすればいいかしら…。」
「いるかい?フルール。」
それは、聞き慣れた声。
「ユリウスさん、テオくん。いらっしゃいませ。」
「ん?そのウサギ…――。」
「森で見つけたんです。」
「見せてくれる?…――うわっ、すごいなぁ〜!ココとか…この辺は?うむむ。」
「あの?」
「フルール、これ、凄いよ!こんなバイオロイド、見たこと無い。普通はバイオロイドって言ったって、表面だけをちょっと有機物で作るくらいなのに。ちょっと電源かりるよ。」
彼は、ケーブルのようなものを取り出しウサギの左耳に挿し込む。コンセントに繋げると、しばらくしてパチリとウサギの目が開く。
「コイツ、なんか目付き悪いなぁ。」
「そう?可愛いじゃない。この子、機械だから何も食べなかったのね。」
「…しかし、黒いウサギか…――テオ、このバイオロイド、壊れてるのか?」
「今、調べてるところ…。」
『ご主人様イガイノ、メインフレームヘノアクセスは、禁止サレテイマス。暗証番号ヲドウゾ。』
「しゃべったな。」
「暗証番号…セキュリティがかけられてるのか。まぁいいや、もう少し充電したら、ロック外して調べるか。」
「テオくん、無理やりアクセスして大丈夫?やっぱりご主人様がいるってことは、持ち主がいるってことよね?今頃、探してるんじゃないかしら。」
フルールが、心配そうに覗き込む。
「私、やっぱり森に行ってきます。この子を探してる人がいるかも知れないし。」
「フルールが行くなら、吾輩も一緒に行くニャ。店は休みだから、二人共ユックリして行くといいニャ。」
 
再び森へと戻ったフルールとリコリス。すると、前方から知り合いが歩いてくる。
「あれ?オヴニルさん、それにレイヴンさんも。」
「フルールちゃん。どうしたんだい?こんな所で。」
「オヴニルさんこそ、どうしたんですか?」
「ん〜、俺たちは、ちょっと探し物しててね。ところで、ここに来る途中、黒いウサギ見なかったか?」
「ウサギ…って、あの子、オヴニルさんの持ち物だったんですね。今、家にいますよ。」
「いや、俺のじゃないんだが…ちょっと色々あってね。可愛い女の子の持ち物でさ、フルールちゃんの家にいるなら安心だ。後でそっちに向かわせるよ。」
「よかった、今ユリウスさんやテオくんが来てるんですけど、持ち主が分からないなら調べようかって話してたんです。バイオロイドらしいんですけど、セキュリティかかってるから外そうかって話になって。私、先に戻って、持ち主が見つかったって知らせてきます。」
ぺこりとフルールが頭を下げる。
「じゃ、俺たちは戻るか。」
「……。」
「なんだよ?」
「いいのかよ?あのヒラヒラしたガキ連れてって。…ブラックハートのチーク付けてる奴なんて、大抵汚染派だろうが。軍の連中もいるって言ってたろ。めんどくせーことになるんじゃねぇの?」
「大丈夫だろ。軍部が追うなら、もっと大物狙うだろ?さ、戻ろうぜ。」



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