シュワルツ失踪事件 3

あちこちに、ズキズキ痛みが走る。ぼんやりと霞んでいた視界が徐々にはっきりし始めた。
「…ここ…?」
「気がついたか?ココはじぇ〜べ〜の…まぁ、診療所だな。」
「…お兄さん、誰?」
「俺は、オヴニル。で、お嬢さんは?」
「メア。」
「そっか、メアちゃんね。とりあえず、最初に謝っとくわ。悪いな、模擬戦やってたら巻き込んじまった。こいつ、手加減知らねーから。」
彼が示す方を見ると、黒髪の細身の青年がめんどくさそうに立っている。どうやら、自分を蹴り倒した相手は彼らしい。
「ほら、レイブン。お前も謝っとけよ!無関係の女の子、蹴り飛ばしたんだからな。」
「めんどくせー。だいたい、あんなとこに、普通一人で居ないだろ?ただの脳しんとうだし、手加減してやったんだし、別にいいんじゃね〜?」
「私、一人じゃない。シュワルツだって一緒…って、あれ?シュワルツ??」
部屋を見回すメア。いつも、小煩いシュワルツの姿がどこにもなかった。
「オヴニル!シュワルツ、私のウサギ見なかった?!」
「兎?」
「真っ黒で、あのレイブンみたいに目付きが悪い子。」
「ちょっと待て!気安く呼び捨てるな。張っ倒す!」
「もう倒された後。…どうしよう、探しに行かなきゃっ!」
「おっと、待った!まだ寝てないと。わかった、俺達で見てくる。だから大人しくここで待っててくれ、な?」
「わけわかんね〜。オヴニル、なんで俺まで頭数に入ってんだよ?」
「蹴り飛ばした張本人だからだ。ほら、行くぞ!」


「よかったニャ〜、フルール。頼まれてたコスモス、咲いてたニャ。」
「ええ。思っていたより沢山咲いてたし、株ごと持ち帰れば、増やすことが出来るわね。」
レッドベルサイユ、燃えるような紅い色をしたコスモスを抱え、彼女は森から店へ帰る途中だ。初めてのお客様からの注文を受けたユーグとナタリーの二人が困っていたので、事情を聞いたフルールは、以前この森で注文されたコスモスが咲いていたのを思い出し、リコリスと二人で取りに来たのだった。
「早く帰って、二人を喜ばせるニャ。」
「そうね、きっと喜んでくれるわ。…あら?」
茂みの中に、何か黒い物体が落ちている。近づいてみると、大きめの黒ウサギが伸びていた。
「大変!この子、怪我でもしてるのかしら?温かいし、手当すれば大丈夫よね。」
「大丈夫だと思うニャ。でも…こんな真っ黒のウサギ、見たことないニャ。」
「そうね、毛も綺麗だし…誰かのペットが逃げ出したのかも。とりあえず、連れて帰りましょうよ。」



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