月明かりの下 悪夢は始まりの鐘を鳴らす 3

「あんな思いしたのに、シュワルツ、口も悪いし目付きも悪いし…他の子の黒ウサギ、もっと可愛かったよ?目もくるくるしてた。…不良品なんだ。」
「随分な言い草だな、おい。俺は、出来がいいからメアのお守りに回されたんだよっ!こっちだって、お前になんかあったら確実にあの野郎にソテーにされちまうから必死だっての!」
ぷいっと、シュワルツが横を向く。と、メアはシュワルツを抱え上げ歩き出す。
「でも、私、シュワルツ好き。…お出掛けしよう、皆待ってる。」
月明かりも届かない路地裏を進む。人影はなく、予定どおり浄化派によって再生された緑化公園の木々に紛れる。
「やだな、靴汚れる。」
柔らかい土の感触や匂いが、不愉快だった。メアにとって、無機質なモノクロの世界こそが自然なものだった。人工物に囲まれた籠の中の世界、清浄で不変の安住の場所…再び帰るためには、戦果をあげる他はない。
「ここ、だね。」
メアがつぶやく。一見すると何も無い木立の中。しかしそこに伏せたメアは、肩に当てた銃身をしっかりと固定しスコープを覗く。公園の先には、浄化派が建てたプラントがあった。常に厳重に警備されているその場所が、今回の舞台となるべきば場所だった。メアの仕事は、始まりの鐘を鳴らすこと。この日は、夜間に施設設備の入れ替えを行なっていた。当然、施設の警備は搬入口に集中していた。だが、メアの狙いは別の場所、内部に潜入している仲間が開けた窓から見える機器の破壊だ。小さく見えるその的を破壊する。
パンッ!という音と共に、施設から警報がけたたましく鳴り響く。搬入口では警備兵がどよめいたその瞬間、大きな爆発が起こり、それと同時に強行班が内部への突入を開始したようだ。
「お仕事終了。帰ろう、シュワルツ。」
パンパンと念入りに服の汚れを払い落とすと、メアは来た道を引き返した。
 そして翌日、町は浄化プラントが壊され混乱していた。そんな喧騒をよそに、足取り軽く街を散歩するメアの姿があった。
「マントがあって良かった。お日様って、まぶしすぎ。」
「メア、ふらついてないで、さっさと帰ろうぜ。」
「やだ。どうせこの街汚染されてなくなっちゃうんだから、今のうちに見てまわる。」


「麗しの我が総統閣下、ご機嫌いかがです?」
「お前が来たからすぐれんな、オーレリアン。」
「フフ、それは失礼。ところで、ヴィルフリート、君の可愛いペットが頑張ったみたいだね。初任務、成功したそうじゃないか。」
「知らんな。俺が、逐一細かい戦果まで気にしていると思うか?そんなに暇ではない。」
「ふぅん、そうかい。」
オーレリアンは微笑んだ。長椅子でくつろいでいたヴィルフリート、テーブルの上に置かれたPCの画面には、作戦報告書が開かれていた。

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