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自己紹介?



身元不明の人物、酒場にてとあるギルドの男に尋ねられる






ん……何、自己紹介だと?何故私がそんなことをしなければいけないんだ。ああまず名前を名乗れと……はぁ、仕方ない。今の私は偶然気分がいいからしてやる。じゃあそこのお前、一から五までの中で好きな数字を選べ。ん、三だな………ならば今はジークと名乗ることにしよう。…何だその怪訝そうな顔は、せっかく俺が名乗ってやったというのに……他にも名前があるのかって?当然だろう、私には呼ぶ人の数だけ名があり、同じ数かそれ以上に違う顔がある…いや、かと言って実際に顔が変わったりするわけじゃないが。ちなみに一番を選んでいたら…ええと、私はマーチと名乗ることになっていた。三つ前に名乗った名がジークだった、それだけのこと、簡単な話だ。で、次は何を話せって………異能者?ふん、知らないな。少なくとも俺は違うぞ、天術とやらは使えない、あんな人間離れした技。適応法とやらが最近施行されているらしいが異能者の奴等も気の毒にな、まぁ僕には関係ないけど。それでまだ聞きたいことがあるのか?眼帯がおかしい、目の下の隈が酷い……お前の方が酷いじゃないかそのようなことを言うとは。簡潔に答えるとこの眼帯は趣味だ、ぎょろっと目が開いているようで面白いだろう、それから目の下の隈はただ単に暫く寝ていないからだ。今日で五日目か……眠くならないのかって?もう慣れているが、どうしても持たなくなった時はこの薬を飲むようにしている。大丈夫だ、若干ガタがきているが旅に支障がでるほどではないからな。どうして眠らないのかとか野暮なことは聞くなよお兄さん、人には誰にでも事情ってやつがあるもんさ、俺も例外じゃなくな。用件はそれだけか、なら私は失礼する………はぁ、まだあるのか?一人称が定まっていない、と……言われてもな。特に意識しているわけじゃない、自然とこうなってしまうんだ私は、気にするな、ハゲるぞ………いや冗談だ、そこまで食いついてくるな疲れるから。………ふぅ、こんなに人間と話したのは久し振りだ、もう疲れた…魔物との戦いの方がまだ楽だなこれなら。僕はもう失礼するけど、いい仕事があったら紹介してくれよ。これだけが生活の糧だからな………よし、今度こそさよならだ。次に出会う時お前が棺桶に入っていることを祈るよ……いや逆だ、入っていないことを祈ろう。神ではない誰かに。それじゃあ、縁があったらまたいつか、な。人に名を訪ねておいて自分は名乗らないお兄さん。……え、名乗ったけど私が憶えていないだけだと?そんなものは気の所為だ。気の所為だったら気の所為だ。






(以下、逃げるようにしてふらふらと酒場を後にする)




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