絶P | ナノ
音沙汰なき幻影





ルカ・ミルダ
イリア・アニーミ
スパーダ・ベルフォルマ
アンジュ・セレーナ
リカルド・ソルダート
エルマーナ・ラルモ


彼ら六人は人知れず世界を救った
崩壊しかけていた世界を、天と地をひとつに統合することによって

だが彼らのほかにもう一人、仲間がいたこと
それを知る者は、六人が世界を救ったという事実を知る者以上に少ない
そして六人もそのことをあまり他人に話さなかった


世界を救った者たちの一人で“元”転生者、スパーダ・ベルフォルマ
彼は七男とはいえどベルフォルマ家の嫡男であり
他の五人たっての頼みで、もう一人の仲間の行方を彼が調べた
何故ならその仲間は、彼女は、黎明の塔に残り
最後の目撃情報は塔の内部、王都軍との交戦だったからだ
(その後ろには赤い服で長身の男が立っていたという目撃情報もあった)

しかし、見つからなかった


夜のように黒い服、襤褸布のような外套、隻眼の少年(実際は少女だ)
目撃者が口にする特徴はどれも間違っていなかったのだけど

塔内で交戦中、眩い白い光に包まれたかと思うと
気付けば誰もが気を失い倒れていて、もうそこに二人の姿はなかったという
ちなみに負傷者は出たが、その人物との戦闘で死者は出ていないそうだ



だが塔周辺での死者は多かった
王都軍も、アルカ教団の信者も、たくさんの人々が死んだ
スパーダは死亡者リストを直々に調べたが


ジークと呼ばれていた少女も
ハスタ・エクステルミという殺人鬼も

生存情報はおろか、死体さえ


終ぞ見つかる事はなかった







それから数年が経った今も、その生存や死亡は彼女を彼女として知る六人の誰ひとりの耳にも入らない
あの少女の存在はまるで嘘だったのではないかと思わせられるほどに



「きっと大丈夫、彼女は生きてると思うよ、僕」「そうね、アイツのことだしそのうちひょっこり戻ってくるわよ」「ひゃひゃひゃ、だよなァ!アイツなら大丈夫だっつーの!」「そうね、わたしもそう信じています」「生きていたとしても奴と一緒だろうがな……」「うっわ、おっちゃんそれは言わない約束やでぇ」



皆口々にそう言う
平和になった青空の下、久しく集まった笑顔は絶えない


しかし彼らの信頼に反して


未だ、音沙汰ひとつない







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