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異能者捕縛適応方







「放せっ!!放しやがれっ!!」


「異能者捕縛適応法により、お前を連行する。この悪魔め、大人しく歩け!」


結局、スパーダは先に捕まった少年を人質に取られるような形で捕縛されることとなる
何故会ったばかりで関わりの薄い自分を気にかけるのか、本気で分からない少年は眉間を狭くして無言になった
対照的にスパーダは未だに身を捩り何とか逃れようとし
そして先刻の兵士の侮辱の言葉に食い付いた


「悪魔だとォ!くそ、言ってくれるじゃねーか。このっ、放せー!」


大人しく連行されていた少年は、後ろの方から町人の彼に対する陰口を耳に入れていた
チンピラ呼ばわりされるスパーダはどうやらいいとこのお坊っちゃんらしい、不良だけど
並んで連行される際、黙っている少年を訝しんだのかスパーダは、気遣うように自分より背の低い少年を覗きこんだ



「おい……どうしたんだよ、どっか怪我でもしたか?」

「いや…、よくわからない」

「何が」

「お前が」

「あァ!?」


「こら、黙って歩け!」


兵士に背を押され、尽きることのなさそうな悪態を吐くスパーダ
どうして自分がこのような状況に陥っているのか分からない少年は、先程まで乱闘騒ぎが起きていた場所を振り返る
そこには銀髪の少年が、どこか怯えた様子で佇みこちらを見つめていた
手を振ってみようにも両手を拘束されていたので無理だった










手を拘束され猿轡と目隠しをされ、二人は馬車の荷台へ放り込まれる
次に視界が開けた時には留置所のような施設の中だった(転生者研究所というらしい)
まだぶつぶつと不満を呟いているスパーダを気にせず歩いていたら別々の部屋に入れられ
彼の抗議も意に関せず、兵士とはまた一風違った雰囲気を纏う男たちに半ば突き飛ばされるようにして狭い牢屋に閉じ込められた少年
スパーダの喚き声も、少し時間が経てば欠片も聞こえなくなってしまった

特にこの拘置状態に不安を感じていない様子の少年は、扉のすぐ向こうで見張っている男の背を眺める
確か彼らはグリゴリと言って、異能者の特殊能力、天術を封じる力をもっているそうだ
(それでスパーダも抵抗を諦めていた)


「つかぬことをお聞きするが、素敵な仮面のお兄さん。何故私はこんなところにいるんだろう」


突然掛けられた平坦な声に驚きを露わにもせず
彼の眼帯に負けず劣らず奇妙な仮面を装着している男は、振り返りもせず鼻を鳴らした



「ふん、異能者だからに決まっているだろう」


「異能者……ね。知らない、何だそれ」


「白々しい…」


神の眷属である我々にはわかるのだ、とグリゴリはどこか誇らしげに胸を張る
それにへぇ、と気のない返事を返した少年は扉のすぐ向こうにいて、だが壁を隔てているため男は安心していたため
つらつらと、異能者の脅威とそれを制することのできる神の末裔について語る、が



 カチャ リ


金属の擦れる音にグリゴリが振り返る、と同時に扉は蹴破られた
ぐぁ、と短い悲鳴を上げて扉と一緒に吹き飛ぶ仮面の男
少年は何食わぬ顔でその境界を踏み越え、頭を打って意識を失ったらしいグリゴリの傍に屈み込む



「僕は異能者じゃないからその力とやら、無効だと思う」



反応を見せることもできない男をそのまま放置し、少年はあてもなく施設を徘徊することとなる
その手には細く長い金属の棒、それを使用し錠を外したことは明らかだった
だが、宛てもなく敵だらけの施設を歩きまわれば当然、拘束され牢屋へ逆戻りするのは目に見えていたけれど






「……おう、また会ったな」


「久し振り、みどりの少年」



少年はまたしても突き飛ばされ、牢屋に転がった体勢を整えぬままで
スパーダとの初対面を思い出させるそれだった
結局こうして再開を果たせたわけなのだが、スパーダが素直に喜べないのは至って普通の神経だろう


倒れた状態から腕で身体を起こし、自身の髪と身に纏う布を引き摺りながら四つん這いでスパーダの寄りかかる壁際まで進む少年
ぐるりと広くはない室内を見回すと、少年以外にスパーダを含め、四人の人間がいた

ある程度慣れたのか、違和感も気にならなくなったスパーダは
薄暗い部屋によく馴染んだ灰黒色の尻尾のような髪を眺めて言う



「つーかよ、お前異能者だったのか」

「違う。異能者なんて、知らない」

「別に隠さなくたってオレもそうらしいから気にすんなよ」


追及すると、それきり少年は閉口してしまう
何で急に黙るんだ、と意を込めて足元に転がる少年を見下ろすと、彼は唇だけで「違う」と
蚊の鳴くようなほんの小さな声でそう囁いた



どこかで見たことのある銀髪の少年が、何か言いたそうにこちらへちらちら目を寄越している





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