「晋助、」
「………名前」
嗚呼、哀しそうな顔で、瞳で、俺を見るな。
折角、お前を手離す覚悟ができたのに。
離したく、なくなっちまう、だろうが。
「…早くヅラの所に行け」
「……っなん、で」
「っ」
つぅ、と名前の瞳から一筋の涙が流れた。
そんな、顔をさせた、俺、なのに。
どうして、俺に、ついてくるんだ?
「…邪魔、なんだよ」
「っ」
「お前がいると、やりにくいんだよ」
「しん、すけ」
「っ早く行け!ヅラか、銀時の所に…早く」
どうして、
どうして、
どうして、俺の大切なものは、いつも
いつも、俺の手からすり抜ける?
どうして、俺の大切なものは、いつも
いつも、掴むことができないんだ?
「晋助」
「…早く行け」
「晋助」
「、早く行け」
「晋助」
「早く、行け……頼むから………」
これ以上、俺といたらお前は…
泣くだろう?
喚くだろう?
壊れる、だろう?
「…早く行け、後ろは振り向くな」
「し、んすけ、わたし、はっ」
涙を流しながら喋る名前。
嗚呼、俺はコイツのこんなところに、惚れたんだ。
全てに一生懸命で、必死で俺の後を付いて来るお前に、惚れたんだ。
「わた、しは…だいすき、だったよ、」
「…っ」
「だから、お願い、最後に、きいてっほしい、の」
「、なんだ」
嗚呼、こんなにも。
「 だきしめて 」
コイツが、名前が、愛おしい。
「…ああ」
俺よりも小さめの華奢な体を腕におさめて、
そうして俺は、空を仰ぐんだ
包帯の巻かれていない右目から、涙が溢れないように
唇を噛みしめて、
最後の一言を、名前に
「――― 愛してる 」
そう言って、俺は名前を手離したんだ。
ずっとずっと、愛してた
ずっとずっと、愛してる
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