※モモ成り代わり


「モモちゃーん!」

「今日も可愛いーっ」

「あは、は…ありがとうございます……」


私の名前は如月桃。
…というのは、『こちら』での名前。
本当は名字名前という。

この世界は、某動画サイトから誕生した『カゲロウプロジェクト』の世界らしい。

らしいというのは、私は本来その『カゲロウプロジェクト』が動画や小説によって存在していた世界にいたから。
それなりに動画も見たし、CDも買った。小説も読んだ。
だからすぐに『如月桃』という名前でここが『カゲロウプロジェクトの世界』であることが分かった。

何故、私が『如月桃』なのか。
数年間考えたけど、結局答えは一つしかなくて。
私はきっと、『如月桃』に転生…いや、成り代わってしまったのだ。


「はあ……」


自然とため息が零れる。
小説で確か、『如月桃』は16歳の時に『メカクシ団』に加わった。
私は今、16歳。現役アイドル。高校一年生。
完ッ全に、これから私はメカクシ団と関わっていく。
――というか、恐らく『今日』関わるのだろう。
何故って、さっきマネージャーさんに仕事関連でブチ切れて「アイドル辞めます宣言」をしたから。
原作でも『如月桃』はそうしてメカクシ団…キドと出会っていたはずだ。

ファンであるなら、本来は嬉しいのかもしれない。喜ぶはずだ。
二次元世界にしか存在しないはずの彼らと出会い、触れあえるチャンスなど普通はないのだから。
私だって始めは喜んだ。「シンタローが兄で、キド達に会える」と。
でも、気付いてしまったのだ。

――私は、『物語』の終わりを知らない。


「(もうすぐ、なのかな……キドが、現れるのは)」


『如月桃』がキドに会って、何だかんだでデパートの立て籠もり事件を解決するところまでは知ってる。何となくだけど、覚えてる。
…でも、それ以上は何も知らないのだ。
私の動き次第で、この『物語』の終わりが変わってしまうかもしれない。
それだけは避けたかった。だから努力したりもした。
どうにかしてこの成り代わりを元に戻せやしないかと。
でもダメだった。
それどころか、何故か分からないがシンタローがものすっごいシスコンになってしまった。(最早シスコンで済まされるレベルじゃないほどに)
まあ要するに、努力は全て無駄だったのだ。


「(うわ、シンタローから凄い着信きてる…)」


恐らく私がアイドルを辞めると言った事が家に伝わったのだろう。
今の時間母はいないだろうから、シンタローが電話に出たのかな。それで私に電話を……。
でも、電話かけすぎだろう、これは。二分おきに一回かけてきている。今またきた。出ないが。


「おい、」

「うっひゃ、ぁ!?」


急に声をかけられて、携帯に集中していた意識が散乱する。
驚きで体が跳ねて携帯が固いコンクリートに叩きつけられた。
このタイミング、は、まさか。まさか……。
そろりと顔を上げてみる。そこにはやはり、想像していた顔があった。


「あ、いや……すまん、驚かせるつもりはなかったんだが……」

「…いえ…大丈夫です…」


キドだ。間違いなく、キドだ。
カノに騙されてここまで来たんだろう。原作通りなら。
淡々と話が進んでいく。
私はこのまま、原作と同じようにこの人をスタッフさんと勘違いしている『フリ』をしてキドについて行かなければ。
一言一言に気をつけなければいけない。歩き方にも気を配らなければならない。

――『物語』を壊さないために。


「一緒に来てくれ」

「…は、い」


私の平穏、どこへ行ったんだろう?







まさかの成り代わり。今後の拍手予定(今のところは)
これは夢というんですか。いいえ言わないでしょう。(反語?)
愛され系で百合とか近親とかもうカオスにするつもりです
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