空洞ができた。見えるわけではない。心にできたのだ。原因はわかっている。会長の卒業だ。そして会長が在席していたはずの場所には、何故だかボクが座っている。見えていた世界の角度がちがう、と立派な椅子に座るたびに違和感に包まれる。以前に視線を感じていた頬にはなにもなく、今は後頭部のあたりにまなざしを、気配を感じる。あたたかい、慈しむようなやわらかさをもったまなざし。そのあたたかさはボクを満たしてくれるのだろうか。いいや、満たすことはできないのだろう。きっと。
 それでも彼の、キリの従順な態度ややさしさに甘え、すがってしまうのだ。
 キリ、と呼べばすぐにはい、と返事が聞こえる。

「キリ、命令だ。この穴をうめてくれ」



110407〜110505

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -