眼鏡、外してもいいか? 少しかすれた声。優しくて、甘い、心地の良いテノール。小さくうなずく。それからお決まりの言葉を心中でつぶやく。弟よ、いまだけ、このほんの少しの間だけおまえを忘れて欲望に溺れてしまうことを許してくれ。 目を閉じる。瞼にキスが落ちる。触れるだけ。それが何度も。 優しいなぁ、ボッスンは。それが余計にオレを溺れさせるということに気づいていないのか。やがてキスはくちびるへ。舌が侵入してくる。 頭がおかしくなる。こうして、こんな行為を繰り返すうちに、いつかオレの頭はボッスンで占められてしまうのだろうか。 いつか弟を思い出さなくなってしまうのだろうか。 101112〜110103 |