(!)吸血鬼安椿





「ボクの血を飲んでください。そうじゃないと安形さんが…」

 安形の顔色は生気を失っていた。それもそのはずである。一週間、血を口にしていないのだ。吸血鬼の安形にとって、血液以外を口にしても栄養にはならない。安形はそれでもかなり渋ったが、自分の愛している人が言うならと白い首にそっと歯をたてる。やわらかな肌が鋭利な歯を弾いていたが、やがてずぶずぶと受け入れていく。椿が小さく呻いた。

 気がつくと一心不乱に、血を貪り飲んでいた。くたりと途中から力なく垂れ下がった手首は指先が少し冷たい。
 慌てて大丈夫か生きてるか椿、と頬をはたく。椿ははいと弱々しく笑んだ。

「生きてくれて…ありがとうございます」
「ばか。それはこっちの台詞だよ」



110423

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