うつむきがちに歩くとベージュのワンピースと鉤編みのカーディガン、緩く巻かれた栗色の髪が視界の端をうろつく。あぁ、なんだってボクはこんな恰好をしているんだろう、そう思う頭とは裏腹に平板な胸は早鐘を打つ心臓を抑えつけていた。早く生徒会室で着替えよう。

「あ、」

 はたと立ち止まる。しまった。さっきこの服に着替えた教室へ制服を詰めたカゴバッグを忘れてきてしまった。引き返さなければ。踵を返してもと来た道へ。角を曲がる手前で、男子生徒のにぎやかな会話が聞こえる。なんだか聞き覚えのある声。どうしようと周りを見渡したが、隠れられるようなところはどこにもない。万事休す。ところが曲がり角から現れたのは会長と榛葉さんだった。榛葉さんはえっ、と声を上げてボクに近寄ってきた。

「制服はどうしたの。うわばき…も履いてないから何年生かもわかんないな…。ていうかこんな子いたっけ、安形?」
「さぁ見たことねえな」

 会長はボクをものめずらしそうにつま先から頭のてっぺんまで眠たそうな目で無遠慮に見ている。榛葉さんが、こんなにインパクトある子、一度見たら覚えてるはずなんだけどなぁ、ぽつりとつぶやいた。
 ぺこと頭を下げて、逃げようとしたら今度はきちんと制服着てくるんだぞ、うちの新しい会長が黙っちゃいねえからな、怒るとこわいぞー、背中に声をかけられる。あたらしいかいちょう、ボクのことか。振り向いて小さくうなずく。

「あー、すまねえミチル。俺忘れ物したから先に玄関まで行っといてくれるか?あとで追いつくからよ」
「いっしょに行こうか?」
「すぐ終わるから大丈夫だよ」
「そう?じゃあ先いくね」

 榛葉さんが小さくなるまで後ろ姿を見送ると、会長はボクに言葉をかけた。

「なんかお前って、俺の好きなやつによく似てる。好きなやつっていうか付き合ってるんだけど、うん。かわいいぞ。頭がガチガチに堅くてすぐに怒るけどな。でもやっぱりかわいい。怒ってても」

 やさしい視線をボクに向ける。気づいてないのだ、たぶん。なんだかとても幸せなこそばゆい気持ちになる。ボクもかっこいい会長が大好きです。ついこの格好であるということを忘れて、そう言ってしまいたくなる。

「あぁ、俺もう行かねえと。ミチルになんか言われちまう。じゃあな、椿」

 ぎょっとして目を見開いたら、やっぱりお前か、口元が笑って、ウィッグのつむじにキスを落とされた。






▽匿名さま
はじめまして、匿名さま。このたびは1000hit&フリリクにご参加くださってありがとうございました!ご希望のかわいいふわふわしたサス子ちゃんとずれている気がしますが、受け取ってくださると幸いです><
レス不要とのことでしたのでこちらに。
安形は椿ちゃんがどんな恰好しててもすぐ分かっちゃうと思います。分かっていて、知らないふりをする安形とかいいと思います。
えろい雰囲気ありますでしょうか?だいすきだなんてうれしいです^////^激励のお言葉ありがとうございます!がんばりますね!
リクエストありがとうございました!

110505
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