大学生になって、わりと自由な時間が増えた。もちろん講義には出ているのだが、自分の取った講義にさえ出席すればよかったので楽といえば楽だった。ボッスンと俺は学科も学部もちがっていたものの、月に何度かは会うことができた。そしてその顔を合わせるうちの何度かはセックスをした。
 昼間のセックスは嫌いだ。かといって夜ならいいのかというと、そういうわけでもないのだけれど。
 朝と昼の中間みたいな半端な時間帯にどちらかの家に上がって他愛のない話を数時間ほどだらだら過ごして、そのあとセックスしたりしなかったり。
 ひんやりしたシーツとお互いの距離にわずかにボッスンの体温を感じながら、ベッドでまどろむ。心地よい身体のけだるさ。額の汗はかわいたものの、不快なことに変わりはない。それでも顔を洗いに行かないのは、少しでも長い間ボッスンと過ごしたいからだ。
 ボッスンの指にオレのそれを絡めようとベッドのなかで腕を密かに伸ばす。挿入時に額を拭ってくれた彼の手は俺の手をすり抜けて起きあがる。ボッスンの手はシャツをつかみ、ジーンズをつかみ、パーカーをつかむ。

「俺そろそろ帰るわ」
『バイトか?』

 掴み損ねた左手ですばやくキーをたたく。頭のすみでまたか、そんな諦めにも似た感情が芽生える。待って。たったの三文字。キーをタイプしようとしない左手をみつめている。動け。そう念じてみても魔法にかけられたかのように動かない左手。

「そういうわけじゃねーけど、レポートのしめきり近いし」
「…」
「ごめんスイッチ、またな」

 ボッスンに非がないことはわかっている。レポートのしめきりだってバイトだって、すべてしょうがないことなのだ。けれど。性行為のあとのひとりは寂しすぎる。合成音声で話す気にもなれないオレは、今日もまた『いかないで』が言えなかった。
 部屋に差しこむ夕日も朱色を濃くしながらいつしか夜の色に包まれていく。俺は彼がいなくなった室内でひとり依然として全裸のままベッドに横たわっていた。






▽椎名まちるさん
椎名さん、このたびは1000hitありがとうございました〜ご希望のボッスイとはほど遠いと思いますが、受け取ってくださると幸いです><
椎名さんのスイッチへの愛には勝てる気がしないのですが、それでもスイッチへの愛をたくさんたくさん詰めこんで書かせていただきました。ますますスイッチがすきになりました、リクエストありがとうございました!

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テーマ「人外ファンタジー」
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