(!)靴舐めてます注意





 日差しは充分射し込んでくるにもかかわらず、蛍光灯が部屋をさらに明るく照らす。生徒会室の、会長のみが座ることのできる他よりほんの少し立派な椅子に座って加藤を見下げる。真剣そのものといった表情でうなずいた加藤が恭しくボクの革靴をとる。
 跪いた加藤が革靴に顔を近づけ、舌を這わせた。舌先が靴を舐めあげる。ふくらはぎを持たれて、側面も、踵もきれいにしてゆく。

「…慣れてるのか?」

 はぁ、感嘆の息が漏れる。ため息とともにいいえ、と返事が聞こえた。

「初めてです」
「…そうか」


 自分が先ほど加藤に言い放った言葉が頭の中を駆け巡る。『忠誠を誓うなら、そうだな、ボクの靴を舐めろ』それがあまりにもめまぐるしいスピードで、思わずくらりとしてしまう。

 まさかほんとにやるとは、と眩暈のする頭で思った。さすがにそこまではしないだろう、加藤には悪いがさっさと諦めてもらおう、そう思っていたというのに。言った途端、加藤の顔つきが変わった。その瞬間には抱きかかえられて、男子を抱えているとは考えられないような恐るべき速度で生徒会室まで連行されたのだった。
 それにしても。本当にこちらが引いてしまうほど真面目に靴を舐めている。もしかしたら、もともとそういう気があったのかもしれない。
 ふいに顔を上げた加藤の瞳はうっとりと潤んでいた。足元へ手が伸びる。唾液でべたべたの靴と靴下を恭しく丁寧に脱がした。
 裸の右足。その親指を口に含む。ざらざらした舌が親指を刺激する。

「かっ、だめ」

 反射的に跳ねた左足が加藤の頬に直撃した。うっすらと赤く腫れていく頬。

「あっ!すまない、キリ、大丈夫か?」

 いえ、すみませんオレは大丈夫です、と情けない声がしたけれど、それはどこかよろこんでいるようにも聞こえた。頬を見せてもらいながら痛かっただろう?と尋ねる。えぇまあ、と頬をさすりながら答える加藤に言い知れない感情が腹の底からわき上がってくるのを感じながら、ただ、今や部屋の明かりを反射して唾液でてらてらと光る左足の革靴をうっそりと見つめていた。



110405
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