ほとんど足を踏み入れたことなどなかった生徒会室にできた、オレの特等席。会長の背後。別に、オレの席がないわけではない。きちんとオレが使うものとして、机もいすも与えられているのだけれど、オレは敢えて会長、椿佐介様の後ろに居場所をみつけた。
 百から二百の紙の集大成。山となった書類に向かって、ペンを走らせている。大きないすに比べて小さな身体は幼さを感じさせるのに十分である。左手は止まることを知らない。
 椿様の、きれいに並んだ字が好きだ。後ろから見たときの耳の形が好きだ。つい最近、寝不足なのか、うたた寝をしていたから耳を食んでみたところ何も言われなかったので舐めたら、耳を赤くしていい加減にしろと叱られたことがあった。半歩ほど近づいて見下ろせばうなじがのぞく。襟足に覆われた白い肌は、黒髪と対照的でひどく艶めかしい。そういう点はいいのだが、結局は許可なしに触れられないのだ。見るだけだと何度自分を慰めてきただろう。知らず知らずのうちにごく、と唾を飲んでいたら

「キミはなにをしているんだ?」

と書類から顔も上げず下を向いた状態で発せられた声は机に反響したためにこもりぎみで、あまり気にしているふうにも聞こえなかった。触りたいです、そんなこと言えようもなかったわけだが。



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