眠っている。毎日毎日、日当たりの良いこの空間で。この生徒会室は学校の秩序を守り生徒を守り、よりよい学校にするために設置されている神聖であるべき場所であるのに、自分の睡眠欲に負けて眠っているなんてあっても良いことなのだろうか。
 会長を見る。暖かい陽を背中に受けて、幸せそうに惰眠をむさぼっている。
 改めてまじまじとみつめているが、心臓の鼓動が大きく、早くなるのがわかる。この人のことが好きだという感情が身体中に心地よく広がっていく。いや、そんなことより、会長を起こさねば。
 会長、起きてください会長、と呼びかけながら肩を揺する。ん、と一度言ったきり、また寝息が聞こえ始めたので再び肩を揺する。先ほどよりも強く揺さぶっているのだが、起きる気配はない。
 ふぅとため息をひとつ吐いて会長をみつめる。距離が近くなったからか、さらに心臓が早鐘を打つ。身体全体が心臓になったようだった。
 迷ったのち、頬にキスを落とす。あまり自分からキスするのは慣れていない。ちゅっ、リップ音が響いたのを耳が拾った瞬間、なんだかすごく恥ずかしいことをしてしまった気がした。とたんに顔が熱くなる。顔を覆うと、手のひらがひんやりして気持ちよかった。
 かたん、物音がして会長のほうへ向き直ると、薄目をあけた。会長、声をかけるとむくりと起き上がった会長の口角が上がる。

「椿からそんなことしてくれるとはな」
 にやにや、口角は上がり続ける。
「じゃあ、今度はここだな」

 くちびるを指でつつく会長はとても楽しそうである。会長の長い指がボクの薄いくちびるをゆるゆるとなぞる。

 こんな、こんな神聖であるべきの空間でこんなことがあってもいいのだろうか!



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