過去と未来5 「酷いことを言ってるって俺も分かってる。でもさ、俺、最期まで幸せだったから」 河合にもそうであってほしいんだ。彼は笑った。 どうやら中野君は、私に無理難題を押し付けてくれたようだ。ずるい人、と呟くと、違いない、と言ってまた笑う。 「時間切れだ」 「中野君の馬鹿」 「ひど!まあ馬鹿だけどさ」 「…私、中野君が嫉妬するくらい幸せになるから」 「そりゃ楽しみだ。…待ってる」 唇に、消えかけの唇が重なって、それを最後に彼は消えた。白昼夢だったのかと思うくらいに、彼の姿は跡形も無かった。 たとえ幻だとしても、私が勝手に創り出した妄想だったとしても、私は今日の事を一生忘れないだろう。彼の香りが残る体に手を回して上を仰ぐ。 そこには、あの半年前と同じ青い空が変わらずにあった。 ←|戻|後書き . |