過去と未来4 | ナノ

過去と未来4












「…どうして、来たの」
「心配だったから」


 彼はそう言って優しく抱き締めた。ふわりと漂う香りが、涙を更に降らせる。
 いつだって彼は私に優しかった。そんな中野君が、私は好きだったのだ。


「…好、きっ」
「…俺もだよ」


 しゃくり上げる私の声に、中野君は答えた。重ねるだけのキスは、余計に寂しさを増幅させたけど、それでも私は幸せだった。中野君の体の向こう側が、段々とクリアになっていく。


「忘れない、から」
「うん、忘れないで。でも、幸せになってほしい」


 貴方が居なくちゃ幸せになんてなれない。言葉を無理やり呑み込んで頷いた。


「本当は俺以外見て欲しくないけどな。だけど河合が笑顔じゃないのは嫌だから」
「…嫉妬してくれるんだ」
「当然じゃん。俺が一生涯愛した女だからな」


 クサい台詞だ、と私は思ったけど言うのはやめておいた。真剣な顔をした彼も、少し照れたように目を伏せたから。



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