総受け物語1 | ナノ

総受け物語1












「―――めい、飴やるよ」
「え、くれるの?」


 平凡な少年、芽衣(メイ)は差し出された飴と差し出してきた本人とを見比べて目を瞬いた。
 女子の平均身長より6,7cmばかり低い芽衣(148.7cm。本人は150cmと言い張っている)は、必然的に上目遣いとなる。
 平凡ながらもクリクリとしたその瞳が輝き出したのを見た青年は、芽衣の可愛らしさにデレデレと鼻の下を伸ばしていた。折角のイケメンが台無しである。


「ありがとう、脇岡くん」


 ふわふわと無防備に笑う芽衣に脇岡を始め、周囲の人々も同じように癒されている。芽衣は平凡ではあるがどことなく小動物を思わせるため、クラス内で愛玩動物として扱われていた。
 脇岡が差し出した飴を恐る恐る小さな手に取り、キュッと握り締めた。その仕草でさえも愛らしく、クラスメイト全員がメロメロになる。


「…おいひい」


 もごもごと飴を口に含みながら嬉しそうに笑む。飴が大きいのか、口いっぱいに含んでいるその姿はさながらハムスターのようだ。恐らく脇岡は確信犯だろう。


「めいくん、めいくん」


 一人の女子が口をパンパンにしている芽衣を呼んだ。芽衣は首を傾げながらもトコトコとその女子の元へと向かう。大半の女子よりも背が低い芽衣はここでもまた上目遣い(もちろん無意識だ)をやってのける。それを見た女子は案の定。


「〜〜〜っっ(か、かわっっ)」


 見事にノックダウンされたのである。ちなみに隣にいた女子も同様だ。


「ど、どうしたの?福田さん」


 まさか原因が自分だとは思ってもいない命はオロオロとしながら福田の心配をする。その際に覗き込む完璧な角度にk.o.


「福田さ、鼻血!!」
「大丈夫よ、この世に悔いは無いわ」


 グッ…!!と親指を立てる福田。一瞬キョトンとしたが意味を理解した途端に更に慌てだす芽衣。そして福田に同意するクラスメイト一同。



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