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Notice!












 肌に纏わりつく湿気が、なんとも気持ち悪い。むっとした暑さにじんわりと汗が滲み出る。俺は不快感に顔を顰めた。
 どうにか出来ないものか、と周りを見回してたまたま目に入ったトイレに入る。洗面所でバシャバシャと水を被る。この際髪が濡れたって構わない。ついでに腕も濡らしてキュッと蛇口を閉めた。


「あー生き返る」


 ほんと、暑いのにもほどがある。一息ついて顔を上げると、鏡に映った平凡な自分の顔とご対面。
 大して特徴のない生まれ持った面。時々、泣き黒子が色っぽいと言われるが、それくらいだ。今更変えられるものでもないから悲観なんてしないけど。ハンカチなど持ち歩くような几帳面な性格じゃないため、手を無駄にブラブラさせながらトイレから出る。
 今は授業中のため廊下には誰もいない。あ、一応サボリじゃないから。ちゃんと許可はとってある。こんな容姿でも風紀委員だから特権で授業免除なんだよ。
 委員長に呼び出されたので風紀室に向かっている途中だ。…と言ってもそれを口実にフラフラしてるのも事実だけど。既に呼び出しメールから20分は経ってる。別に急用じゃないからいいんだよ。
 ちなみに俺はデスクワーク専門。肉体労働は、出来なくもないが強いわけでもない。護身用に少し嗜んでるくらいのもんだ。
 殴る蹴る締め上げる、の仕事は他の委員が喜々として請け負ってくれるしな。血気盛んな彼らはいつも暴れたくてうずうずしてる。正直俺が参加すると獲物が減るからって嫌な顔をするだろうし。…これだから不良は。まあイイ奴らなんだけどさ。


「そろそろ真面目に行かないとなー」


 重い重い足を運んで風紀室に向かう。風紀室に辿り着く前に生徒会室の前を通らなければならない。
 ああ、嫌だ嫌だ。あの人に会いたくない。だがそう思っても会ってしまうのが神様の悪戯故の産物。



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