相棒 「お待たせ。帰ろうぜ」 「おう」 ぼんやりと教室の窓の傍に立って外を見ていると、相棒が肩を叩いてきた。 こいつはもう生まれてこのかた18年目の付き合いになる。幼馴染よりも近く、兄弟というには何かが違う。この関係に名前をつけるのなら一体何なんだろう。 そう思って以前に聞けば、「互いに依存し合ってるしなぁ。菖蒲がいなけりゃ俺は俺じゃないし。あえて言うなら体の一部?」と首を捻っていた。言う通り、体の一部であり、唯一の執着を向ける相手。それが一番しっくりくる表現だった。 「お前ら本当ラブラブだな」 揶揄する声音で共通の友人が言った。俺と相棒は顔を見合わせて目を瞬く。 「「ラブラブ?」」 見事なハーモニーに、ポカンと口を開けた友人。 「は?それでくっついてないとか言うなよ?」 ああ、なるほど。漸く合点がいった。周囲はどうやら俺たちを恋人同士に仕立てあげたいらしい。だけどそれは余計なお世話だ。 俺達が望んでいるのはそんな生温い関係ではない。求めるのは切っても切れない絆。 「俺は愛じゃなくて、吉弥が欲しいだけ」 「同感」 同意してくれたことに満足して笑う。 「悪かった。既に夫婦なのは分かったから視界に入るな。甘すぎる」 うんざりした様子で項垂れながらシッシと手を振る。扱いが酷いような気もするが、まあ構わないか。吉弥が横に居たら、それでいい。 「ずっと一緒だ」 俺の心を見透かしているかのようなタイミングで囁かれる。吉弥を見上げて笑ってみせると抱き寄せられた。 されるがままにしていると、友人を含め、教室に残っていたクラスメイトが退散するのを視界の端に捉えた。結局すぐに視界は相棒によって遮られることとなるのだが。 (…んぅ、ここ教室だろ) (誰も見てないから平気) (それもそうか) end 菖蒲…あやめ吉弥…よしや ただの依存バカップル ←|戻|→ . |