恋の悲劇 「お前、もう要らないから」 そう言った彼の瞳に、僕はもう映っていなかった。好きだとか嫌いだとか、そういう次元ではなく、そこにあるのはただの「無」であった。 「副会長…」 「―――そうですか。お幸せに、"会長"」 気遣わしげに僕を呼んだ書記の言葉を無碍にして、貼り付けた笑みで了承を述べた。もう二度と、彼の名前を呼ぶことはない。どこか確信めいた思いは、こころをズタズタに切り刻んだ。 幼少期からずっと一緒で、互いに高校生になってから、告白してきたのは向こうだった。そんな何年も何年も積み上げてきた関係は、学園にやってきたたった一人の転校生に呆気なく奪われた。それだけの関係だったのだと割り切るには、僕の中にある彼が大きすぎた。 彼が僕を「無」とするなら、今まで築き上げてきた全てを否定されるのと同じだ。つまり、僕自身を全否定されたということ。そうなれば、僕はこれからどうやって生きていけば良いというのだろうか。 向けてくれるものが、好意でなくても良かった。憎悪でも良かった。無関心が、一番、辛かった。 恋の悲劇は死でも別離でもない。それは無関心である。 ―W,サマーセット,モーム end 会長×副会長から会長←副会長で悲恋 やっぱり無が一番辛いです ←|戻|→ . |