口は災いのもと | ナノ

口は災いのもと












 口は災いのもと。はてさて、それは誰が言い出したのでしょうか。その言葉が真実であることをよぉく実感しております。現在進行形でね!


「有栖川サン…?」
「うん」
「うんじゃない!どういうことっすか!?」


 女子に騒がれている整った顔が目と鼻の先にある。どういう状況なのか説明してほしいものだ。俺に迫ってどうしたいと言うのか。


「だって君が恋人欲しいだなんて言うから、俺が立候補しようかと思って」
「俺男。あんたも男。よって無理」
「愛があれば性別なんて関係ないさ」
「俺に愛なんてないから!」
「じゃあ俺の溢れる愛を分けてあげる」


 あ、駄目だ。この人話聞いてくれない。会話が成立しているようで肝心なところが伝わってないんだけど。


「有栖川」
「何?」
「つまりお前…お、俺のこと好きだったりする?」
「まさか!」
「だ、だよなー!冗談だよな、てっきり俺」
「好きじゃなくて愛してるんだよ」


 アイシテルって何それ美味しいんですか?俺耳悪かったっけな。この前の聴力検査はAだったはずなんだけど。


「…ごめん、聞こえなかったからもう一回言ってくれ」
「何度でも言うよ。俺は君を愛してるんだ」
「頭大丈夫ですか?どっか打ったんじゃないですか?」
「うん、打たれたよ」


 ああ、良かった。やっぱり頭打ってたか!いや良くないのか…とりあえず病院連れて行けばいいのか?先に保険医連れてきた方が早いかな。


「君の眼差しが俺の心臓を打ち抜いた。…一目惚れなんだ」
「重症だな。早く診てもらった方がいい」


 そこで照れる意味がワカラナイ。とりあえず、逃げるが勝ち。


end


(何で逃げるんだい?)
(胸に手を当ててよぉく聞いてみろ!)



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