日課2 | ナノ

日課2












 そして今日も日課を果たす。


「先生、好きです!」


 いつもの常套句。しかし今日はどうやら返事は違うらしい。先生は心底面倒そうな表情で俺に問い掛けた。


「お前さ、毎日フられて平気な訳?」


 暗に早く諦めろっていう事だろう。常の俺ならきっと笑って何か返事するだろうと思っていたに違いない。俺もそうしようと思ったけど、開けた口から声が出る事は無かった。震える唇は意味を成さず、俺はどうやらその言葉にどうやら傷ついたようだった。
 どうしてだろう。友達に言われた時は普通に返せたはずなのに、何故か足元が崩れた気がした。静まり返る職員室に居られなくて、俺は口をぎゅっと引き結び飛び出した。


「…平気な訳、ないじゃん」


 気付いたら教室に来ていて、ふらふらと自分の机に着いて突っ伏した。何だか俺を否定された気分だった。存在を拒絶された気分だった。フられる時点で分かっていた事だ。
 先生が俺に振り向くはずも無いし、諦めなきゃいけないんだって。何度も何度も諦めようとした。
 だけどその度に先生の黒板に書かれた字の綺麗さや、分からない所を丁寧に教えてくれる事、正解したら少しだけ目を細めて頭を撫でてくれる事などを思い出して、どうしたって「好き」という気持ちを再確認するだけだった。


「痛いなぁ」


 キリキリと痛む胸をぎゅっと押さえる。もう顔を合わせられないと、漠然と思った。



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