無き声3 | ナノ

無き声3












※キス描写有


 だから少年は衝撃を受けた。声を出せないと聞いて男は笑ったのだ。それも嬉しそうに。意図は分からない。分かる筈もない。
 背筋に寒いものが走った。だが少年はそれを無視した。少年は知りたいと、男を知りたいと強く思ってしまった。


「お前は本当にイイな」


 嗚呼囚われると少年は思ったが、伸びてくる腕を避けることは無かった。男の腕は少年の腰を引き寄せ、もう一方の手は後頭部に添えられた。近づいてくる男の端正な顔に抵抗せずに瞼をゆっくりと下ろした。
 触れ合う唇。しかしそれだけで済む訳もなく男の熱い舌が少年の口内を暴れた。何度も角度を変え唇を重ねる。
 少年は苦しさに目尻に涙を溜め、男のスーツの裾を震える手で引っ張った。その行為こそが男の本能を目覚めさせ、二人きりの広い部屋に響く水音さえ男を掻き立てた。漸く男は満足したのか、名残惜しげに唇を離す。
 少年は初めての上、激しい口付けに息を荒げて生理的な涙を流していた。白い肌は桃色に染まり漆黒の瞳は潤んでいる。更にはその幼い顔が快楽に歪んでいるのが男の背徳感と情欲を燃やした。何と甘い蜜か。
 男は息を整える少年を見下ろして密かに笑った。


end



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