気付きたくない2 | ナノ

気付きたくない2












 そっと彼を見上げてみる。決して目に優しいとは思えない赤く染まった髪。日本人に似合うはずのない色合いなのに彼には似合っていると心底思ってしまうのは、彼が整った顔だからだろう。
 …意外にも彼はピアスは両耳に一つずつだけのようだ。耳を飾ったシルバーの高そうなピアスが鈍く光っている。ぼぅっと観察していた俺に気づいた彼は耳に心地良い低音で「どうした?」と聞いてきた。
 俺に合わせてか、少しだけ目線を下げてくる。カチリとピースがはめ込まれたように視線が交わった。常に冷酷で鋭い目をする彼だが、俺にだけは少しだけ和らげてくれる。もしかすると彼でさえ自覚していないのかもしれないが。
 俺にとってその目を見る度に心底大切にされていることを知れる。俺は気恥ずかしくて目を泳がせるが、彼はそれを許してはくれなかった。彼の大きな手が俺の髪に差し込まれ強制的に焦点を合わせられる。


「俺以外、見るなよ?」


 命令なのにどこか縋っているようにも聞こえた。俺に脆い彼を突き放すことなんて出来るはずもなかった。


end


冷酷溺愛不良→→→←冷静平凡
突然告白された後の話
絆されている自分に気付いて悩む平凡の心境



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