気付きたくない | ナノ

気付きたくない












 彼と出会ったあの日のあの瞬間、俺の世界は変わった。それは良い意味でも悪い意味でも。俺は良くも悪くも平凡な容姿をしていた。
 けれど彼は所謂不良と呼ばれる人種であり、俺の世界には有り得なかった人種だ。そしてそんな彼と一緒にいることが必然的に多くなった日常の中で、俺は不良に絡まれることが多くなった。
 例えば彼への恨みだったり妬みだったり、彼の隣にいる俺が平凡であることへの僻みやら嫉妬だったり。それについては一度も暴力を受けたことはない。きっと彼が牽制してくれているのだろう。
 だけど守られるだけじゃ情けなくて、でも自分でどうにか出来るのかと聞かれれば答えはNOだ。どうしたって喧嘩なんてしたこともないし、無理に決まっているのだ。
 ふと考えてみた。もしかすると、彼と関わってメリットはないのではないだろうか。
 思い返してみれば全てがデメリットだった。友人も離れていったし、毎日がパンダ状態。だけれど彼と離れようとしない俺は、なんなのだろう。何を思って傍にいるのだろうか。



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