雨のち雨2 | ナノ

雨のち雨2












 始まりは多分、全寮制学園とかいうむさ苦しい所の入学式。俺は生徒会会長親衛隊長に一目惚れした。当時あまり仕組みを理解していなかった俺は取り敢えず親衛隊長の親衛隊に入った。
 だがしかし、組織は奴隷と言っても過言じゃないくらいに親衛隊長の言いなりだった。命令の内容はズバリ制裁。そういう汚い仕事は下っ端に回ってくる訳で。
 俺は一応ノーマルだったんだが、その時点で童貞は卒業させられた。そして転入生が来て美形に惚れられて「きーっ!」ってなった隊長がまた命じた訳よ、制裁を。
 で、まあ…バレて退学を言い渡された。家に帰るにも体裁っつか親に悪いから電話で俺を勘当してくれるように頼み込んで。部屋のものとか全部処分して身一つで街に出てブラブラし今に至る。


『お前ちゃんと考えているのか』
「え、実家は妹が継ぐだろうし」
『違う、自分の事だ』
「俺?だって今から死ぬ奴の事なんで考えても意味ないでしょ?」


 死に方なら真剣に考えてるけどな。でも家族には迷惑掛けたくないから、自分って分からないような死体じゃないと駄目だよなぁ。それに、もう致死量の毒薬飲んじまったし。この体も時間の問題だ。


「…あ」


 今、やっと分かった。何で郁人に電話を掛けたか。


「俺が郁人の事を好きだからか…」


 一番最初に思い浮かぶって事は求めてる証。そうか、俺は郁人に惚れてたのか。思わず口に出してしまったけど、これ聞こえちまったよな?


「…ばっかじゃねぇの、俺」


 携帯電話の電源を連打して逆パカする。俺はその場に頭を抱えて蹲った。
 フードを深く被って笑う。何で今頃涙なんか出るんだよ。実家に電話した時だって泣かなかったのに。小学生以来泣いた事なんて無いのに。


「ははっ今更じゃん」


 今更取り返しがつく訳が無い。愚かだ、俺は。…早く、死ななければ。彼らに示しがつかない。俺はフラフラと立ち上がり歩き出した。



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