黙れば良いんじゃないかな1 俺、梨木千(なしぎせん)はこの学園の一年だ。学園内にある寮部屋。たまたま備え付けの冷蔵庫の中に水が無く、しょうがなく重い腰を上げた。 −−−ガチャ、ガンッ あ、ヤベ。人居たっぽい 凄まじく鈍い音に「あ」と思わず呟いた。俺、かなり力入れて開けたかもしんねぇ。つか力入れた。 「…いてぇ」 低い、かなりエロボイス。あ、ヤベ。イケメンかもしんねぇ。同じ言葉を心中で繰り返し、恐る恐る顔を確認する。 「−−−!!」 顔を伺い見た瞬間ボクサーも真っ青な反射神経でドアを閉じた。否、閉じようとした。俺よりも素早くドアの間に足を入れた本人を内心冷や汗だらだらで見上げる。 俺もそこそこデカい(178cm)のだが、この男はもっとデカい。180…後半はあるだろう。故に見上げることとなるのだが、思いの外近い顔の距離にギョッとする。 綺麗に整った顔立ち。人類の造形美の最高峰。よって、美形に目敏いこの学校でかなりの有名人だ。勿論俺も知っている。だがカッコイイとか抱イテ(片言)とか言ってる場合ではない。 (絶対に言わない。俺はノーマルだ) それ以前にこの男は最恐とつく大不良様なのだ。黒髪に赤メッシュ、顔は確かに美形だが眼力が半端ない。 あ、ヤベ。俺死んだかもしんねぇ。心中で呟くのは三度目にして死を覚悟した。 ←|戻|→ . |