無意識のゼロセンチ 好きな人が俺のベッドで寝ている。俺の気も知らないで、無防備な姿で。 団地のお隣さんで、かれこれもう生まれてから16年の付き合いだ。 幼馴染というよりは兄弟のように育った俺たちだったが、いつの間にか親愛とは違う感情が俺の中に芽生えていた。 最初は気のせいだと言い訳していたのも、根を張って咲かせた花は、俺に否定させてはくれなかった。 人見知りで友人も少なく、2人きりの時にだけ俺に甘えてくるこいつに優越を感じてしまう。 愚かだと自分でも思う。それでも止められない気持ちは抑えようとするだけ加速していく。 無邪気な笑顔は可愛いし、無防備な姿を独り占めしたいし、白い首筋に噛みつきたくなる。少しニキビの痕の残る頬は触るともちもちしていて気持ちいい。 男にしては綺麗な細い指が艶めかしく俺の目に映る。 その手で俺のモノを握ってくれたなら。そんなことを考えては罪悪感に苛まれながら自慰をする日々。 襲いたい衝動を必死に我慢しているというのに、当の本人は何も知らないでこうして易々と食べてくださいとばかりにさらけ出す。たまらない。 「かわいいな、くそっ…」 すやすやと眠る愛しの君を起こさぬように小さく悪態をつく。 寝顔を見ているとついつい唇に目がいく。 リップクリームを常備しているこいつの唇は、俺と違って荒れ知らずで瑞々しい。 ―――ふに。 吸い込まれるようにしてその唇に俺の唇を重ねて、バッと身を起こした。 口もとに手をやって悶えそうになる自分の体をどうにかしておさめる。 「…っ」 想像していたよりも柔らかかった。自分の考えに再度撃沈して頭を抱え込む。 無意識ってコワイ。ごめん。めっちゃ興奮してる。もう一度キスしたいだなんて思ってはいけないのに。 このままだといつか襲ってしまいそうで本当に怖い。 それもこれも、こいつが可愛すぎるのが悪いんだ。ばかやろう。俺のばかやろう。 勃起してしまった息子をどうにかするために、前かがみになりながら部屋を出る。 オカズにしてごめん。反省します。でも今は許してくれ。 return |