君の隣 | ナノ

君の隣












 僕は、男のひとに恋をした。数あるこの世界の住人の中で、たったひとり、その人に。
 何故、とか、どうして、とかなんてもう今更で、好きになってしまったら止まらない。恋心なんてそんなものだ。相手が男というのはいただけないけれど、それでも好きになってしまった。
 僕がその人に気持ちを伝えることはこの先一生ないだろう。この友情という中で成立している僕らの関係を、自ら終わらせることなんて出来ない。この気持ちを押し殺してでも繋がっていたいと思うのは、僕の傲慢を表しているんだろうと思う。
 今も、彼の横顔をじっと見る。別に美形というほどでもないけど、イマドキの男子って感じ。茶色に染めた髪はふわふわとしていて、ふとした瞬間触りたいのを堪えるので必死になる。元々垂れ目なのが、笑うともっと甘く目じりが下がって、その様が僕はとてもとても好き。


「なあ、寄り道しねぇ?」


 隣を歩いていた彼が僕を視界に入れて笑う。好きで好きで堪らないその顔で、君は笑う。僕はわざと仕方ないなあって肩を竦めてみせて、彼を見上げた。


「いいけど、どこに?」
「フォーティワン!ハロウィンフレーバー食べたい!」


 目を輝かせて意気込む彼に微笑む。


「いいよー。僕も食べたかったんだ」
「今ならLINEのスタンプももらえるんだって!」
「まじ?そりゃ行かなきゃだね」


 「だろ?」と言って足を速める君を追いかける。僕と彼はあまり身長が変わらない。だから僕も足を速めればあっさり彼に追いついた。


「何味にする?」
「行ってから決める」
「お、俺もそーしよ!」


 何気ないこの日常が失われないように、幸せな日々が続きますように。僕は願う。これから先もずっと、君の隣に「友人」という名目でいられますように。



そっと少年は気持ちに蓋をした。



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