天然王子の平和な日常 別名「王道学園」とも言われている名門全寮制学園。見る人が見ればヨダレものである。そんな王道学園の、これまた王道な生徒会にてとある爆弾が落とされた。その爆弾は王子と呼ばれて崇拝されている副会長の口から放たれた。 「―――セフレってなんですか?」 柔らかな木漏れ日の色をした髪をふわふわさせ、オーストリアの血を色濃く受け継いでいる翡翠の瞳が瞬いた。これぞ「王子様」といった容貌からかけ離れた下品な単語に、生徒会室にいた全員が文字通り凍りついた。 来る者拒まずな俺様会長も、下半身ユルユルなチャラ男会計も、この爆弾には思わず手を止めざるを得なかった。無口無表情のワンコ書記はかすかに眉を下げ、双子の庶務は目を丸くして互いに顔を見合わせている。しかし爆弾を投下した当の本人は事の重大さを理解せずに首を傾げるばかり。それでも全員が沈黙を破らないので、彼は再びアノ単語を口にした。 「セフレってなんのことでしょう?」 ズン、と更に空気が重くなったのは気のせいではない。なんともいえない室内の空気を打破したのは会計だった。嫌な汗を流しながら、しかし他人にはそれを気付かせないように平生の笑みを保つ。 「ふくかいちょー、ソレ誰に聞いたのぉ?」 その他の生徒会役員は「よくやった」とばかりに会計を副会長のやり取りを身守る。副会長は不思議そうに会計の方へと顔を向けた。 「村西君に」 「…村西って誰ぇ?」 怪訝な顔をする会計に、双子庶務が声をあげた。 「村西ってさ」 「アイツだよね」 「「ムキムキゴリマッチョ」」 双子はゴキブリでも見たかのように舌を出す仕草をする。 ←|戻|→ . |