ただいま5 | ナノ

ただいま5












「生きて、償うべきよ。そして、この家の仕来たりを変えてちょうだい」
「…お母様…」
「それが貴方の使命だわ」


 「本当は」と母は続ける。


「私が貴方達を生んだ時に、悪習を断ち切るべきだったの。そうしなければ、ならなかったはずなのに。…私は出来なかった。今でも、…今だからこそ、後悔しているわ。だから、代わりに引き裂かれる辛さを知っている冬が、それを無くして。これは、お願いよ」


 冬は瞠目した。初めて聞くことが出来た母親の本音だった。
 恐らく、母も父も双子を忌み子とする悪習のために奔走したのだろう。それでも無くすることは出来なかった。
 辛かっただろうと思う。冬も雪も同じように同じだけ愛されていたと実感していたから、尚更、双子のために何も出来なかったことが悔しかっただろう。


「…お母様」


 冬は静かに母を呼んだ。揺れる瞳が冬を捉える。


「僕が、白神家を変えます。雪のためにも、北撫子のためにも」
「冬…」


 撫子を恨んでいないと言ったら嘘になる。だけども、復讐しようなどとは考えなかった。
 確かにその手で殺めたのは許せることではないが、その分撫子は純粋だったのだろうと思う。純粋すぎた、真っ白な子供だったからこそ、親に洗脳されてしまった。彼に罪は無いと冬は結論付けたのだった。



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