ただいま2 | ナノ

ただいま2












 代金を支払って礼を述べてからタクシーから降りる。冬はリュックを背負い直し、家へと向かう。
 大きな門の前に着けば、そこには一人の上品な中年女性が立っていた。優しげな笑み浮かべて冬を待っている。


「おかえりなさい、冬」


 表情に違わぬ柔らかい声音が耳朶まで届く。つられるようにして冬も微笑んだ。


「ただいま戻りました、お母様」


 ふわりと包み込まれて、その安心感に身を委ねて目を閉じた。


「見ない内にすっかり大人になったわね」
「身長も少し伸びましたからね」


 抱擁を終えた二人は見つめ合う。互いに以前と違うところは無いか確認する。
 冬には母が少し小さくなったような感じを覚えたが、それは彼自身が身長が伸びたからであって、他は何も変わらない。相変わらず若々しい、とまではいかないが年相応の落ち着いた雰囲気を纏っている。


「お母様は何も変わりありませんね」
「ええ。何もね」


 嬉しそうに母親の顔で破顔した。



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