ただいま そろそろ薄手の物であれば、羽織っても違和感がなくなってきつつある今日この頃。冬は日本に降り立ち、懐かしさに目を細めた。 シャツの上にカーディガンを重ね、ダークグレーのチェック柄の七分丈ボトムズに、リュック一つといった出で立ちだ。少年らしいあどけない雰囲気が抜け、凜とした青年へと変貌を遂げた彼は、タクシーを拾い一息ついた。 「今日はどちらから?」 「久しぶりに留学先から帰国したんですよ」 「それはそれは」 タクシーの運転手は、経験を積んできた証の笑い皺を深くして相槌を打つ。 「一番にやりたいこととかあるんですか?」 「そうですね…」 不意にそう尋ねられる。思い浮かべるものは既に決まっていた。 「大事な人に、会いに行きます」 そう言って柔らかい表情を浮かべた冬。タクシーの運転手は「若いですなぁ」と微笑むのだった。 ←|戻|→ . |