Grow up! 3 「俺がしようか?」 「いいんですか?お願いします」 見兼ねたヴァンが手を差し伸べた。その手にリボンを渡す。椅子に座っている海の後ろへと立ち、櫛で艷やかな漆黒の髪を梳かす。 絡まることもなく梳かし終え、ヴァンは纏めるために片手で髪を集めた。銜えていたリボンでささっと結ぶ。黒に青が映えて綺麗だ。 「出来たぞ」 「ありがとうございます」 満足げに頷いたヴァンに礼を述べた。器用だなぁ、と思いつつ自分の不器用さに少し凹む。 そんな海を知ってか知らずか、ヴァンは「ずっとこのままでも俺が毎日してやるからな」と言って笑った。タイミングの良さに驚いたものの、素直に嬉しくて海も微笑む。 「こりゃ忍耐力の勝負だな…」 海の微笑みの美しさに、思わずクラリとした。すぐにでも理性が切れてしまいそうだ。 だが、彼に嫌われたくはない。その一心で暴走しそうになる欲望を押し留める。理解を得るためにはきっと長期戦になるだろう、と思う。 「忍耐力?」 「俺の問題だ、気にするな」 「?」 怪訝そうにする海に適当に誤魔化す。納得はしていないものの追求はやめて、海は話題を変えた。 ←|戻|→ . |