Grow up! 2 「―――で、どういうことだ」 「さあ、心当たりは無いんですけどね」 何も変わったことはしていないと告げると、ヴァンは複雑な表情をした。 「どうかしました?」 「いや…成長したら更に美人になるんだなと」 「男に美人はないですよ。この髪も鬱陶しいですし、切っても大丈夫ですかね?」 「駄目だ」 髪を持ち上げながらそう言う海に即答する。どうして?と不思議そうにする彼に、言い逃れは出来ないと溜息をついた。 「…折角綺麗な髪なんだ。大事にしろ」 「…女じゃあるまいし。でも、ヴァンさんがそう言うなら仕方ないですね。紐か何かありますか?髪を纏められるようなものが欲しいんですが」 「ちょっと待ってろ」 ヴァンが姿を消したのを見届けてホッと息をつく。平生を装いはしたが、内心ではドキドキだ。 褒められるのにはまだ慣れていない。髪が綺麗などと言われて喜ぶような女々しいやつだと思われたくなくて、海は必死に頬が赤くなるのを我慢したのだった。 ふう、と髪を掻き上げてだらりと背もたれに凭れかかる。どうしてこんなことになったのか見当もつかないが、少しだけ嬉しい気持ちもある。子供扱いをずっとされ続けていたため、ヴァンと同じ立場に立てたことが嬉しい。 「これでいいか?」 「はい」 青いリボンを現れたヴァンから受け取って早速髪を纏めようとする。…が、なかなか纏まらない。指通りがいいせいでするりと髪が手から逃げてしまうのだ。暫く格闘していたが、諦めて溜息をついた。 ←|戻|→ . |