Grow up! いつも通りに、空が明ける前に起き上がった海は、ふと違和感に首を傾げた。いつもと変わらないベッド、いつもと変わらない窓、部屋、壁。 しかし何かが違うような気がしてならない。だがその違和感の正体が分からずに海は眉を寄せた。 暫く悩んでいた彼だったが、ずっとこのままでいる訳にもいかずにとりあえず着替えようと自分の体を見下ろした。 「…え?」 キョトン、一つ目を瞬く。一度目を擦って、もう一度自身の体を見る。もう一度入念に目を擦る。さて、見てみる。 「えええええ」 驚きを口から吐き出すが、誰にも拾われずにただ部屋に反響するだけであった。 海は再度自分の体を見下ろした。明らかに成長している。子供独特の柔らかい体ではなくなり、青年らしい無駄な筋肉の無い体格へと変貌していた。 サラリと視界の端に映った髪も、かなり長くなっている。腰まである髪に、女でもないんだから、と海は苦笑した。しかしその長い髪さえも、海の美貌には違和感なく溶け込み、儚い美しさを演出していた。 「むう。とりあえずヴァンさんに聞いてみよう」 あと、服も貸してもらおう。海はボタンが弾け飛んだらしい前全開のシャツと、足の長さが足りていないズボンを脱いで近くにあったタオルを腰に巻いた。 その格好のまま部屋を出てヴァンの部屋の戸をノックする。 「ヴァンさん、起きてますか?」 「あー?起きているが…なんかお前、声が変じゃないか?」 風邪でもひいたのか、と言いながらドアを開けたヴァンは海を視界に入れた刹那、コチンと固まった。 「起きたら大きくなってまして。すみませんが服貸してもらってもいいですか?」 「…は!?」 素っ頓狂な声を上げて顔を真っ赤に染め上げた彼は、凄い勢いで自身の部屋の中へと戻り取ってきたシャツとズボンを海に押し付けた。 「とりあえず着替えてこい!」 「はい」 動揺している彼を愉しそうに笑いながら素直にそれらを受け取った。 ←|戻|→ . |