2011 クリスマス4 「―――喜んでくれるかな」 上品な和紙で出来た箱が入った紙袋を手に、雅はほわほわとはにかんでいる。彼の可愛さに衝動のまま息吹は雅の髪を梳く。甘んじて受け入れる雅は僅かに目を細め和んでいる。 二人は今、有華に礼と別れを告げて大通りへと戻ってきていた。有華の店で両親と時雨、そして千尋へのプレゼントを制覇した雅は今日一番の大仕事を終えたとほくほくしている。 冬の日照時間はあっという間で、既に朱い陽は傾きかけていた。昼間は忙しなかった往来の人々も今はゆったりとした歩調でクリスマスに酔いしれた街を堪能している。 「雅」 「はい」 「寄り道しても良いか?」 雅はすぐに首を振る。もちろん付き合いますよ、と笑う雅につられて息吹も目元を緩めた。 「じゃあ行くか」 視界の端で頷く雅を捉えて、息吹は歩みを合わせながら目的地へと向かった。 着いた先は駅地下にあるロック調の、それでいてシンプルな衣服を扱うブランド店。雅は物珍しげに辺りをキョロキョロと見渡した。 「…こういう所、初めて来た」 ポツリと零した言葉に息吹「なぜ?」と尋ねた。雅は口に出ていたのを恥じながらも答える。 「普段着は和服なので洋服はあまり着ないんですよ」 「今日は?」 「兄から戴いた物です」 今の雅の格好は黒のシンプルなロンTに細いボトム。上着はファーの付いた黒に近い灰色のコートだ。お洒落の欠片も無いSIMPLE IS BESTな服装だが、雅が着ているだけで何故かお洒落に見える。 体の線の細さが際立っていて正にモデルのようだ。着飾らない方が雅らしいとも思う。逆にゴテゴテした物を来た雅など想像もつかない。というか想像したくない。 「洋服は詳しくないんですけど、こういうデザインって凄く好みです」 楽しそうに服を見て回る雅につい頬が緩む。この店にある服はシンプルなものが多いし、雅にきっと似合うだろう。 ←|戻|→ . |