2011 クリスマス2 | ナノ

2011 クリスマス2












「…雅は?」


 主題の無い問いかけに雅は目を瞬く。コンマ数秒後に息吹が言わんとする事を理解した。


「家族のプレゼントを買いに」


 「雅は何故街に?」という質問の予想外の雅の返答に息吹は驚いたが、時雨の凄まじいまでのブラコン具合を思い出し納得した。
 あの様子だと、恐らく毎年強請られているのだろう。高校生にもなって、と思いはしたが口には出さなかった。
 ふむ、と息吹は考える。マフラーを貰った事だし、代わりになるものをあげるのも良いだろう。そう結論付けた息吹は早速提案する。


「俺も行こう」


 不意を突かれた雅だったが、すぐにいつものほにゃりとした笑みを浮かべた。一人でプレゼントを悩むのも、こうも毎年だと限界がある。こういう時に限って優柔不断さを無駄に発揮する雅にとって息吹は心強い味方だ。


「もう決めているのか?」
「いえ、全く」


 清々しい笑顔に息吹は思わず呆れる。


「和物が良いかなとは思っているんですけど…」


 職業柄、家柄的に和物の方が需要がある。だからといって着物を買おうものなら数百万は軽く必要だ。どうせ高価なものは受け取ってくれない事をよく知っている雅は、先は長いと嘆息する。


「…良い店を知っている」


 息吹の声に顔を上げた雅の腕を引く。息吹に連れて行かれるままやってきたのは狭い路地裏にある、看板も何も見当たらない古い家。雅は本当に此処が店なのだろうかと思案するが、息吹は躊躇いもせずに戸を引いた。


「ようこそいらっしゃいました」


 着物をキッチリ清楚に着こなした女性が両手を床につけ上品に礼をする。和に囲まれ育った雅にとって、屋敷のような空間に親しみを感じる。そして何よりも顔を上げた20代前半と思われる女性と目が合った瞬間声を上げた。


「有華さん!?」
「…雅さ、ま?」


 呆然と見開かれた瞳に雅が映り込む。息吹は心底怪訝そうに二人の様子を伺う。一つ間を置いた後、藤井有華(ふじいゆか)は目を輝かせた。



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