2011 ハロウィン 予測不可能物語 「HAPPY HALLOWEEN!」 薬草取りから帰ってきたヴァンを待っていたのは、猫耳が生えた海だった。あまりにも突然すぎたのか、思わず固まったヴァンがやっとのことで出した第一声は。 「…何だそれは」 「ハロウィンですよ、ヴァンさん」 「はろ…?」 図上に「?」を乱舞させる彼に海は苦笑する。この世界にハロウィンというものがないのは既に精霊達に確認済みである。 「僕の世界で10月31日は仮装してお菓子を貰いに行くんですよ。"お菓子くれなきゃ悪戯するぞ"って言いながら家を訪ねて回るんです」 「…で、その耳は?」 「これは化け猫のみやさんがやってくれました」 "我はあまり力が強くにゃいので一日が限度だにゃ" 誰がやったかじゃなくてその経緯を聞いているんだが。とヴァンは項垂れた。 その様子を心配げに見やる海の耳は気持ちに連動してペタリと伏せられている。なんともいえない可愛らしさにヴァンは手を額につけた。 「…ヴァンさん?」 不安げに揺れる深緑の瞳にたまらなくなって抱きしめた。困惑して慌てる海の横にいた化け猫のみやさんは「若いのぉ」と言って空気を読みその場を去っていった。空気の読める人(?)である。 「悪戯するか?」 「え、いやお菓子…」 「菓子なんて持っていると思うか」 しどろもどろになりながら、今までの付き合いの経験で持っていないだろうことを思い至った海は頬を引き攣らせた。物凄く嫌な予感がする。 「悪戯しろよ」 「何で命令…」 「かーい」 甘く低い声音で名前を呼ばれて海は縮こまる。 「猫耳可愛いな」 へにゃりと力なく伏せてふるふると震える猫耳に触れるとビクリと海の体が跳ねた。ヴァンがその反応に口角を上げた、その時。 ―――ベシッ "はい、そこまでですわ" 「…ってぇ」 「ウンディーネさん…?」 冷たさを感じる美人が微笑んで返す。 "空気を壊して申し訳ありませんが、皆様が見ていらっしゃいますので" 睨むヴァンに表情を崩さぬまま扉の方を指さした。ドア周辺にわんさかと居る精霊達を見た瞬間海は顔を真っ赤に爆発させた。 「ヴァンさん!」 「あー分かった分かった」 名残惜しげに離したヴァンから素早く逃げた海。向かう先は化け猫のみやさんである。 「みやさんっ、お願いですコレ戻してください!」 "折角愛らしいというのに…" 残念そうに言う化け猫のみやさんに海が詰め寄れば渋々と直してくれた。 end ←|戻|→ . |